閑話 生誕祭日(クリスマス)
「今年も【クリスマス】がやって来たね」
「ん。でも、今年は配るところがいっぱい」
「そうだね。王都に領都、アグニスの街と…サファイラスの町もだね」
僕がこれから出向く先を指折り数えると、ブランは嬉しそうにうなずく。
今年も僕たちの暗躍が始まる。
きっかけは数年前のこと。
僕がふとした拍子に、前世ではクリスマスになると、良い子のところにサンタクロースがやってきてプレゼントをくれるんだ、とブランに話をしたこと。
無神論者でキリスト教の信者でもなかったのに、イエス・キリストの誕生をお祝いするという平均的な日本人の生活を送っていた僕が、この世界の暦を見ていて「そっか、もうクリスマスなのか」と呟いたのをブランに聞かれたのだった。
まぁ、サンタクロースの正体ってのはたいていが子供の家族で、単に子供にプレゼントを与えてるだけなんだけどね。
それでも、小さな頃は枕元にプレゼントが置いてあったから、すごく嬉しかったなぁ。
そんなことを話したら、ブランがすごく乗り気になってしまったのだ。
「だったら、孤児院の子にプレゼントをあげたい」
そうブランが提案するので、僕は一も二もなく賛成したのだった。
確かにこの世界なら、魔術という不思議な力があるのでいろいろな奇跡も容易に起こせるだろう。
夜中にトナカイの牽くソリに乗って、寝ている子供の枕元にプレゼントを置くこと……うん、可能だね。
そんなわけで、僕とブランがサンタクロースに扮して孤児院の子供たちにプレゼントを配り始めて数年。
今では王都や領都の孤児院の子供たちは、この日が来るのを心待ちにしていると聞く。
どこぞの枢機卿は、例年のこの奇跡を大々的に報じているから、前世のような一大イベントになるのも時間の問題かも知れない。
★★
「準備は出来た?」
「ん」
そんな訳で、僕とブランは真っ赤なコートを着てサンタクロースに扮する。
この服装についてもひと悶着あった。
わざわざ前世に準ずることもないだろうと、僕は別な色を提案したんだけど、ブランが頑として赤色を譲らなかったんだ。
曰く、僕の髪色と一緒だからとか。
もう、そこまで言われたら、僕も賛同するしかないよね。
いやぁ~、愛を感じて頬が緩むよ。
「何、ニヤニヤしてるの?」
そんなことを思い出していたら、ずいぶんとにやけていたらしい。
怪訝そうな視線で見つめられる僕。
あ~、そのジト目もかわいいなぁ。
「ナンデモナイデス。モンダイアリマセン」
でも、ちょっとだけ恥ずかしかったので、言葉がたどたどしくなってしまう。
こうなったら、無理やりでも話を逸らすしかない。
従魔である
「さあ、異世界サンタクロース出発だ!」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
メリークリスマス。
その後の話も考えたのですが、盛り上がらなかったので、ここで終わり。
次回からまた本編です。
モチベーションにつながりますので、★あるいはレビューでの評価していただけると幸いです。
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