第209話 進退両難(しんたいりょうなん)
「糞がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!あの糞ジジイ、この俺様を見下しやがって!!何が聖者だ!何が聖女だ!たかだか、ちょっと魔術が使えるガキ共じゃねえか!」
「きゃあ」
パウロ大司教から敵対宣言をされて、おずおずとフィデス商会へと逃げ戻って来たドワンは荒れていた。
奉公人が持ってきたティーカップを感情のまま壁に投げつけると、乾いた音を立てて粉々に砕け散る。
寂れた教会で何か下らない足掻きをしていると聞きつけて赴いたところ、そこでは
しかも、感情に任せて余計なことを口にしたばかりに、自分までが窮地に陥る始末。
「どいつもこいつも俺様をバカにしやがって!殺してやる!殺してやるぞ!」
狂ったように叫び続けているドワン。
その様子を見た奉公人は、もうこの商会が長くないことを悟るのだった。
★★
「おい、不味いことになったぞ……」
そう言って商会の執務室にやって来た【クオン】は、ドワンの同僚のひとりだ。
彼はワイロを渡して懐柔した門番から、今回の件の裏付けを取って戻ったところだった。
来客用のソファーに深々と座ったクオンは、大きくタメ息をつくと、門番から聞いてきた内容を語る。
「教会のジジイ共の件だがな。聞けば、魔術で町に入っても、それを処罰する法律が無いんだとよ」
「はぁっ!?何だそりゃあ!!何とかしろよ!いったい何のために食わせてやってるんだ!」
癇癪を起こして周りの物に当たり散らすドワン。
執務室内は、泥棒に入られたかのような散々な様子へと変わっていた。
「まあまあ。あくまでも、検閲ってのは門をくぐる者に対してだけその義務があるらしい。そりゃあそうだろうよ。突然、町中に現れるなんて、そんな奇跡的な魔術を使える者なんていねえって、誰もそう思うよな」
自嘲気味にそう言ったクオンは、カラカラと大笑いする。
「糞ッ!糞ッ!糞ッ!どいつもこいつも無能ばかりだ!どうして、誰も彼もが俺様の足を引っ張るのだ!?」
壊すものも無くなって、自らの髪をかきむしって身悶えするドワン。
「それで、どうするんだ?」
すると、クオンはドワンにわざわざそう尋ねる。
もはや、ここに至ってしまっては、やれることなど決まっている。
追い詰められたことで完全に腹を括ったドワンは、言われるまでもないとばかりにクオンに命令をする。
「クオン、タダ飯喰らい共に連絡しろ、仕事だとな」
「良いんだな?加減は出来ねえぞ」
「構わん。我々に逆らえばどうなるかを教えてやれ」
「クククク……、そう来なくっちゃな!数はどうするよ?半分は
「残り全部だ!あの忌々しい教会を更地に変えてやれ!」
留守を任せられているドワンは自分の権限を用いて、荒事を専門にする者たちへと命令を下す。
すなわち、敵対勢力の殲滅を。
こうして、王都を追われたカイウス商会から預けられた男たちが動き出すことになったのだった。
「久しぶりの荒事だ。アッチに行った面々を羨ましく思ったが、どうやら俺にもまだ運が残っていたようだな」
荒事を担当するクオンは、弱者をいたぶることを至上とするサディストであった。
これまでにも、あらゆる場所で数多の力なき老人や女子供をその手にかけてきた。
余計な反発を起こさせないようにと、商会の上層部から乱暴狼藉は控えるようにと言われていたが、ついにその箍が外されたのだ。
「クククク……、待ってろよ。ひとり残らず
今、裏社会において【狂人】と呼ばれた男が解き放たれた。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
ドワン「行け!」(σ。-ω-)σ゛Go!!
クオン「待ってました!全滅させても良いよね?」«٩(*´ ꒳ `*)۶»ワクワク
???「……」|ω• `)チラッ✧
さて、残された教会はどうなるか、次回をご期待下さい。
モチベーションにつながりますので、★あるいはレビューでの評価していただけると幸いです。
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