第197話 創意工夫(そういくふう)
「僕たちは町中の依頼を受けて、依頼主から情報を取ってきました」
宿に戻った僕たちは、夕食を採りながら情報収集をした結果を報告し合うことにした。
そんな中で、真っ先に口を開いたのが【蒼穹の金竜】ソウシだった。
まだ年若い彼らが情報を得ようとしても、初めて町に足を踏み入れた者が、そう簡単に話を聞ける場所となると限られて来る。
さすがに未だ成人にもなっていない者が、ふらりと酒場に入って聞き込みをするという訳にもいかないため、だいぶ苦労したようだ。
そこでソウシたちが考えたのは、冒険者ギルドに依頼として出ている町中の簡単な依頼をこなしつつ、その依頼主あたりと話をするという方法だったようだ。
「いやぁ、ドブさらいがキツくてさぁ~。臭いし、疲れるしで大変だったんだよ」
そう得意気に語るのは同じパーティーのカズキ。
コヤツは軽口の罰で、ブランにキツめのOHANASHIを受けたにも関わらず、今はピンピンとしていた。
恐ろしいほどの回復力……いや、あまりにもやらかし過ぎて、お仕置き慣れしてるということだろうか?
「次からはもっとキツくしても……」
隣でブランが不穏なことを呟いてるけど、カズキ…………大丈夫か?
まあ、カズキの運命はともかく、ソウシたちが聞いてきたのは、この町の人々がいかに困窮しているかという生の声だった。
「日々の生活に必要な食料が高くて手が出ないほどだとか……」
そう締めくくったソウシは、少し前までは自分たちも貧しい教会でひもじい思いをしていたことを思い出したのか、沈痛な表情だった。
「どこも不景気な話題だ……いや、話題ですね……」
続いてそう語り出したのは、反逆の隻眼のリーダーであるルル。
彼らは、この町の冒険者と共同での採取依頼を受けて、一緒にいる冒険者たちから話を聞いたそうだ。
「冒険者ギルドでも、この町を牛耳ってる【ベネッケ商会】の専属冒険者たちが幅をきかせているようで、それ以外の人たちはかなり肩身が狭い思いをしてるみたい、です」
あまり敬語が得意ではないルルだが、頑張ってそう説明してくれた。
「いやぁ、すごい。ここまで出来るとは思ってなかったよ」
正直なところ、この2つのパーティーがここまでの情報を得てくるとは思ってもみなかったので、僕は心から彼らを褒め称える。
せいぜい噂話のひとつでも持ち帰って来れば上々と思っていたのだが、彼らはどうすれば情報を得られるかを自分たちで考え、実行して見せたのだ。
他所から来た者に町の内情をホイホイと話す者はそうはいないだろう。
仮に、聞かせてはマズイ話を部外者に漏らしたと知られたら、いわゆる村八分にされても文句も言えないがゆえに。
だから、ソウシやルルたちは冒険者という立場を有効に使って、まずは町に住む者たちに信頼を持ってもらうという方法を取ったのだ。
「なんか……成長したんだなぁ……」
僕は思わずそう呟くと、年上の弟子であるカズキの頭をグシャグシャと掻き乱す。
「何だよアニキ!おい、やめろよ、や~め~ろ~!」
褒められているのだと理解したカズキは、笑顔を浮かべながらも憎まれ口を叩く。
そんな様子を見た周囲の面々からは、笑い声が漏れてくる。
ここまで頑張った彼らに、僕たちも負けるわけにはいかないな。
そう思って少々気合いを入れた僕。
ブランに視線を向けると、彼女もまたムフ~ッとやる気に満ちているようだ。
それじゃあ、次は僕たちの番だ。
僕たちがスラムの人たちから聞きまくった情報を披露することとしようか。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
何事も工夫をすることが大切なのだと教えるために、わざわざ情報収集をさせたのだということでした。
ソウシやルルたちもちょっとずつ成長をしているのです。
モチベーションにつながりますので、★あるいはレビューでの評価していただけると幸いです。
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