第九部 多生之縁(たしょうのえん)

第178話 連載再開(れんさいさいかい)

 火の竜ファイアードレイクの素材を王国北部で販売するために、旅路を進む【フォティア商会アグニス支店】の馬車。


 王国の外周に沿う形で北を目指している僕たちは王国東部の要である【ブーフヴァルト辺境伯】が治めるホーベルク地方へとたどり着いていた。

 国内に三家のみ存在する辺境伯のうち、【東域守護】たるブーフヴァルト辺境伯は、他の二家とは異なり秘奥と呼ばれる魔術を持たない。

 その代わりに、勇猛かつ精強な騎士団を有することで知られていた。

 その中でも、泣く子もさらに泣くとまで称される辺境伯領軍の最精鋭【黒色胸甲騎兵隊シュバルツ・クィーラスィア】は、王国最強とまで呼ばれていた。


 ホントなら、僕やブランは貴族の令息令嬢なのでブーフヴァルト辺境伯にご挨拶する必要もあるのだろうけど、今の身分はいち冒険者。

 うん、その必要はないね。


「アルって、貴族の社交って嫌いだね」


 相棒が何か言ってるけど無視。


 だって、こちとら根は日の出ずる国の庶民だよ。

 転生したからって、そうそう上流階級のやり方に慣れるはずもないよね。


 そんな訳で、僕たちは余計なことはしないという方針の下、ひたすら北を目指していたのだった。


「兄貴ィ!町があったぞ!」


 先頭を歩いていた【蒼穹の金竜】のカズキが、進路前方に町があったと報告を寄越す。

 どうやら道は間違っていなかったようで、目的としていたブーフヴァルト辺境伯領の最南端の町【サファイラス】が見えて来た。


 僕は片手を上げてカズキに了解の意を示すと、御者台にいた商会の主【ロイド】に声をかける。


「無事にサファイラスに着いたみたいだね。このまま町に入ってもいいかい?」

「ええ、私の方はオーナーの指示に従いますけど?」

「いやいや、それはダメだ。いくら僕がオーナーだとは言え、今は【アグニス支店】のロイドに雇われてる立場だからね。君が判断すべきだ」


 確かに【フォティア商会】のオーナーは僕だし、この護衛任務の責任者も僕だ。

 でも、僕らはロイドの依頼を受けて護衛にあたっているという体を取っている以上、最終的な判断は彼がすべきだと思う。

 もちろん、それで何か問題が起きれば、それをフォローするのは吝かではない。

 そのあたりはしっかりとしておくことは必要だ。


「こんなところは妙に真面目なんだから……」


 僕がそう偉そうにロイドに説明をしていたら、となりにいたブランが首を振ってため息をつく。

 何だよぉ。

 そもそも、今回の旅はいろんな勉強をするのがもくてきなんだから良いじゃないかよ。


 僕らは護衛について学ぶ。

 ロイドたちは商売で旅することを学ぶ。

 そして、ソウジたちは駆け出し冒険者としてあらゆることを学ぶ。


 そんなことを思いながらブランに視線を向けると、彼女はフッと柔らかな笑みを浮かべる。

 むぅぅぅぅ、『ハイハイそうですね~』って内心で思われてる気がする。


 なんか、ブランの手のひらの上で転がってる気分だ。

 

「…………そうですね。分かりました。じゃあ予定どおりに入りましよう」


 僕とブランのやり取りを見て苦笑いを浮かべたロイドが、とりあえずは一行の責任者としてきちんと判断を下す。


 こうして、僕たちはガラムたちと出会うことになるサファイラスの町へと入ることになったのだった。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


お久しぶりです。

恥ずかしながら帰って参りました(笑)


思ったよりも閑話が読まれていたものですから、ちょっとだけ欲目が出てしまいました。


とりあえず、ある程度の展開は考えてありますので、もうしばらくお付き合いいただけると幸いです。


そして、書き始めて思ったのが、また四字熟語を探さなければならないのか、と。

そういえば、連載中には何度、題名を考えることに心を折られていたことか……。

また、四字熟語辞典を睨み付ける日々が始まりそうです(汗)


まぁ、とにかく頑張ってみますので、今後もよろしくお願いいたします。


モチベーションにつながりますので、★あるいはレビューでの評価していただけると幸いです。

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