閑話 満場一致(まんじょういっち)

「ということで、明日から完全に休みの組を作ります」

「「「「えええええええ!!!?」」」」


 僕が翌朝、夜営の撤収を終えて朝食を摂っている最中に、ともに護衛をしている『蒼穹の金竜』と『反逆の隻眼』のメンバーにそう告げる。

 案の定、うるさいほどに驚かれる。


「兄貴、それってどういうことで……」


 『反逆の隻眼』のリーダーであるルルが恐る恐る尋ねて来るので、僕はその理由を説明する。


「そもそもさ、夜営の準備をして翌朝までの9時間を、3パーティーで3時間ずつ受け持っていたのが間違いなんだよ」

「それは僕らがまだ未熟だから……」

「いやいや、だからって3時間をひとパーティー4人で警戒してる必要はないでしょ?僕とブランは2人で3時間だけど?」

「むぅ……」


 僕がそう言うと、ルルは言葉をつまらせて考え込む。


「ふたりきりなれるから、それはそれでいいけど」

「うん、ブランさん。今は黙ってようね」


 恐ろしいことにウチ嫁(予定)は、時々こうしてわざわざ茶々を入れて来る。

 婚姻届が教会預かりになってから、結構自分のもの扱いされてる気がする。

 これが、獣人特有の独占欲というものかと嬉しく思う反面、多少恥ずかしくもある。

 ほら、女の子たちがキャーキャー言って話が進まないでしょうが。


「あの……それは、ロイドさんは了承してるのでしょうか……」


 しずしずと手を上げて質問をしてくるのは、『蒼穹の金竜』の頭脳担当のカズキ。


「もちろん。ホントなら3時間をひとりずつで賄えるなら、あとの7人は休みだよ」

「でも、いきなりそれは………」

「うん。言いたいことは分かる。だから、明日からは3時間を2人ずつで回さないか?」

「2人でですか?」

「そう、2人ずつなら4人は完全に休める。うまく組み合わせれば、ひとパーティーが丸々休みになるわけだ。どう?やってみる価値はあるんじゃない?」

「2人で……」

「それに、警戒している間の外敵をふたりで始末しろとは言ってないよ。何かあったら声をかけてくれればいいんだし」


 そう続ける僕だったが、カズキたちは今一つ乗り気ではない。

 多分、まだまだ不安なんだろうな。

 だから、旅に出て一月にもなるのに、まだパーティー全員で夜間警戒に就きたいと思っている、と。

 

 でも、それは甘えなんだよな。

 今回は10人もの護衛がいるから、そんな無理は通せているけど、本来ならその半分もいればいい方だと聞く。

 そうなったとき、夜間警戒はどうなるか。

 それは推して知るべしだろう。


 そんなことを考えていた僕が、さらにどんな説明をしようかと考えていると、意外な……否、ある意味では当然な男が賛成の声を上げる。


「やろうぜ、みんな!!1ヶ月もやって来れたんだ。もう俺たちだって、人数が少なくても出来るはずだぜ。それに休みの日があるなら自分達で訓練の時間も作れるってことたろ?最高じゃねえか」


 それは、『蒼穹の金竜』の問題児であるカズキだった。

 考えてみれば、無鉄砲な反面、誰よりも最も向上心があるカズキなら、この案に乗ってくるのも頷ける。

 さて、この言葉に周りの連中はどうかな?


 僕は興味深く周囲を見回すと、何となくだけど前向きにはなっているようだ。

 だだ、もうひと押し必要かな?


 そこで僕は、となりの奥様(予定)に視線を送る。

 すると、ブランはひとつ頷くと、ポキポキと拳を鳴らしながら命令する。


「やれ」

「「「「「はいっ!!!!」」」」」


 こうして、僕が提案した休みの日を作るためのシフト調整が行われることがで決まったのだった。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


まさかの終わらず。

久しぶりなので勝手に喋りだすキャラクターのせいですね。


明日も更新します。



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