閑話 四月一日(エープリルフール)
「ああ、今日はエープリルフールか……」
パチパチと焼けた木が爆ぜる尾とを聴きながら、ポツリとそんな言葉を漏らした僕。
「ん?何それ?」
耳のいいブランは、僕の呟きを聞き取ったようですぐに聞き返して来た。
ロイドの護衛として旅を続ける毎日。
夜営の寝ず番として、ふたりきりで焚き火を囲んでいるのは僕とブラン。
ホントは僕やブランが展開した結界があるから、わざわざこんなことをしなくてもいいのだが、駆け出しの冒険者の『蒼穹の金竜』と『反逆の隻眼』を鍛えるという意味もあり、こうして順番に夜の警戒を行っているのだった。
今は僕とブランの番。
だけど、僕らふたりは結界を張った上で、周囲を【
そんなとき、僕の隣に座っては、思い切り僕の肩に寄りかかっているブランが僕の話の続きを促したのだった。
「うん、前世の話でね、その日だけは嘘をついてもいいよって記念日のことなんだ」
僕が転生者だと知っているブランは、疑うこともなく僕の説明を受け入れる。
「どうしてそんな日があるの?」
「う~ん、確か……、新しい暦を導入するときに、それに反発した人たちが旧暦のその日を嘘の正月だと祝ったとか、とある国のお祭りの中でイタズラをし合うという風習が伝わったとかいろいろとあるけどね」
そこまで説明した僕は、ゆっくりとブランの頭を押し返すとゆっくりと立ち上がる。
少し遠いけど警戒網の中に魔物が入り込んだようだ。
食事の足しとしてちょっと狩ってこようか。
「とにかく、嘘っていうか、誰もが笑えるような軽いイタズラならしても良いよって意味合いが強い日みたいだね。さぁ、ちょっと仕事しようか」
「……氷よ穿て【
「えっ、ええ?何かアッサリし過ぎじゃない?相手も見ないなんて……」
「大丈夫。単なる
「うわぁ……、アッサリ終わらせたよ」
「そんなことより……」
一歩も動かずに敵を屠ったブランは、自分の隣の地面をポンポンと叩くと、早く座れと無言の圧を寄越す。
まさか、僕の隣を動きたくないからってとっとと終わらせた訳じゃないよね?
ポンポン。
じっと見上げるブランの瞳に逆らえない僕は、やれやれともとの場所に腰を下ろす。
「ん」
そうして、満足そうに僕の肩に頭を置いたブランはボソッと断言する。
「じゃあ、今日は
「…………は?」
★★
「アル、大ッ嫌い!!!」
「僕だってブランが大嫌いだぁぁぁぁ!!」
その日の朝、目が覚めたロイドたちは、僕たちがそう言い合っている姿を見て、ふたりが本気で戦えば世界の終わりがやって来ると絶望したとのこと。
うん、ゴメンね。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
ふと思いついたので書いてみました。
後悔はありません(笑)
皆さんも良い新年度をお迎え下さい。
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