第170話 懸崖撒手(けんがいさっしゅ)
老女を瓦礫の下から助け出したあと、戦いの現場からはだいぶ離れた場所で、家の隅に隠れて肩を抱き合って震えている兄妹を見つけて保護することができた。
兄の方でも、教会のミクちゃんよりも年下であろう。
この幼いふたりは、両親が外出していて不在だったときに竜の襲撃があり、どうしていいか分からずに家に籠もっていたという。
大事にならなくて良かったと、胸を撫で下ろすとともに、避難訓練の大切さを再確認することになった。
子どもたちにも避難方法を、しっかりと教えておくべきだと痛感した。
「よし、あとは大丈夫かな……」
僕はもう何度目かになる【
見通しを良くするために、片っ端から瓦礫を次元収納に収めたので、周囲は見渡す限りの平地になってしまったが、まぁ後で復元するので許してもらおう。
「アルフレッド殿ッ!」
すると、そんな僕のところに領兵の一隊が駆け寄ってきた。
彼らは逃げ遅れた者を救助するために、竜が暴れている現場に志願してやってきたという。
そんな一隊を率いていたのは、何と領軍の副隊長。
彼とは避難訓練や街の防災計画などでよく顔を合わせていた間柄で、僕が辺境伯の息子であることを知っているひとりでもあった。
「副隊長さん。まさかこんなに危険な現場にまで出てくるなんて……」
「いやあ、隊長が自ら出張るって騒いでいたんで、それをなだめて出てくるのに苦労しやしたがね。んで、決死隊を組んで出てきてみりゃ、氷の巨人様のおかげでたいした危険にも遭わずに済んで万々歳でさあ」
そう言って高笑いする副隊長は熊の獣人で、つぶらな瞳と頭の上にちょこんと乗っている丸い耳が特徴的な、その大柄な体格には似つかわしくないほどに可愛らしい男性であった。
それはまるで、前世の夢の国にいる黄色いクマのような……。
なので、こんな状況であるにも関わらず、僕は思わずほっこりとしてしまうのだった。
「ま……まあ、とりあえず、僕が見つけられたのは後ろの三人だけです。怪我は癒やしてありますが心のケアもありますので、教会へ連れて行ってもらえれば……」
僕がこんなことではいけないと、考えを切り替えて保護をした老人たちを副隊長に託す算段をする。
彼らの目的が逃げ遅れた者の救助なのだから、あとはお願いした方がいい。
「分かりやした。生命にかけても教会までお連れしやす。んで、アルフレッド殿はこれからどうなさるおつもりで?」
そう副隊長の太鼓判をもらったので、救助した人たちについてはもう心配することもないだろう。
ならば、あとはやることはひとつ。
僕は現在の場所からは遠い場所で、未だに氷の巨人と戦っている
「ええ、軽く怪獣退治をしてきますよ」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
他の作品でも思ったのですが、書いているうちに題名から外れた内容になるのは何故でしょうか?
本話は『竜虎相搏(りゅうこそうはく)』になる予定でしたのに…………(泣)
まあ、その題名は次回に持ち越しですね。
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