第168話 救命救急(レスキュー)
「想像以上だ……」
眼の前で繰り広げられている
氷の巨人が竜を勢いよく投げ飛ばす。
「ギュエッ」
石造りの建物に背中から叩きつけると、カエルを踏み潰したような声を上げる竜。
その痛みに身悶えしている姿は、とても生態系の頂点に存在する者だとは思えない。
氷の巨人は、竜が体勢を整える追撃をかける。
仰向けに倒されてむき出しになった竜の腹を勢いよく蹴り上げる。
対する竜は、フラフラと立ち上がると、その長い尾を振り回して氷の巨人に叩きつける。
とっさに両手でその衝撃を受け止めるが、勢いを殺しきれずに後方へと吹き飛ばされる氷の巨人。
そこでは、一進一退の攻防が繰り返されていた。
「チッ、予想外に被害が大きい……」
俺はそんな戦いを見て、思わず舌打ちをする。
何せここでは、体長40メートルクラスの巨人と竜がぶつかり合っているのだ。
例えるなら十階建てのビルどうしが戦っているようなもの。
両手で耳をふさぎたくなるような轟音も大概ではあるが、一番の問題は大震災クラスの大地の揺れだった。
そもそも、耐震工事なんて概念すらないこの世界だ。
ちょっと強めの揺れが発生すれば、石造りの建物はたちまち基礎の部分から崩れ落ちる。
そして今、怪獣退治が行われているここでは、その戦いの衝撃で次々と家屋が倒壊していた。
見上げるばかりの瓦礫の山が、そこかしこに生まれていく。
「クソッ!巻き込まれた者はいないか?」
前世で、
その国は、困窮に瀕しているために国際化に取り残され、地震に……否、あらゆる災害に対してあまりに無防備だった。
俺がその国に足を踏み入れたときに見た光景は、この世の地獄と錯覚するほどだった。
地震対策がしっかりしている日本ならば、こうはならなかっただろうと思われる。
だけど、その国では日々の生活に追われ、未来の災害には金も力も回すゆとりが無かったのだ。
ただ石を積み重ねただけの家々が、ことごとく崩壊し、避難という概念がない人々は大半の者が逃げ遅れて石の下敷きとなっていた。
数千という犠牲者を生んだあの光景が、俺の脳裏にフラッシュバックする。
「チッ、まずはやるべきことをやらないと」
大型の魔物と対峙することは想定していたが、街中で戦うとここまで被害が出るとは。
これに関しては完全に俺のミスだ。
ウルト◯マンが実在したら、ここまでの被害が出ていたのだろうか。
そんなことが頭の隅を過ったが、すぐに切り替えて為すべきことをなす。
「【
領主命令で何度も避難訓練をしていた効果が出て、多くの人々は無事に避難所まで逃げ切れたとは聞いているが、ブランが助けた少女の例もある。
俺は頭の上で行われている大決戦をよそ目に、瓦礫の山々を駆け回るのだった。
――――たったひとりの
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
アルフレッドは自分のミスと言ってますが、氷の巨人がいなければどのみち竜に踏みつぶされてました。
氷の巨人は、魔術が効かない相手には最善手ではあるのです。
ただ、事前に周囲に誰もいないことを確認する暇が無かっただけでした。
短編新作を投稿しています。
『転生したらトイレの神様だった件』
異世界転生したトイレの神様がウォシュレットトイレの設置を目指す物語です(汗)
トイレ縛り、人の目に触れない縛りでどこまで話を膨らませられるかの実験作です。
そろそろ佳境に入ります。
是非、ご一読下さいませ。
モチベーションに繋がりますので、★あるいはレビューでの評価をお願いします。
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