第161話 自縄自縛(じじょうじばく)
僕の
高位ランクの冒険者がいない以上、現在の戦力で
宙を蹴って死地へと赴くブランの姿を見送る僕は、強い自責の念にとらわれる。
だけど、ここで立ち止まっているわけにはいかない。
僕はうしろ髪を引かれる思いで、為すべきことをするために、ブランとは反対の方向へと足を向ける。
すなわち、逃げ遅れた人々を安全に避難させるために。
「逃げろ!早く!」
「助けて!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」
「…………ダメだ。もう終わりだ」
僕が
事前に避難訓練を受けていた人々はいち早く避難を完了していたものの、それを軽視していた人たちや初めてこの街に来た人たち等はどうすべきか判断がつかずに右往左往している有様だ。
「静まれッ!我々の声を聞けッ!」
「落ち着け!落ち着くんだ!」
領兵が事態の収集を図っているが、恐慌状態の人々は誰も聞く耳を持たない。
このままでは、さらなる犠牲者が生まれてしまう可能性もある。
そこで僕はとある魔術を展開する。
名付けるなら【
人々の気持ちを和らげ、興奮を収める効果をもたらす魔術だ。
人の精神に作用する魔術は難しいものがあるが、前世で鎮静剤を与えたときのイメージで、相手の人が心休まるようにと魔術を紡ぐ。
すると効果は覿面で、それまで大騒ぎしていた人々は突然に落ち着きを取り戻す。
「えっ!?何が!?」
突然に人々が落ち着きを取り戻したことに驚く領兵たち。
そこに僕は急いで指示を出す。
「魔術の効果は長くは続きません。領兵の皆さんはすぐに避難誘導を。ただし走らないで。背後は僕が守りますから」
「あっ……ああ。分かった。お前たち、すぐに始めろ!」
「「「「「はっ!!」」」」」
いきなり現れた小僧に指示をされて領兵たちは不満を感じるかと思っていたが、予想外にも素直に応じてくれた。
「我々、部隊長以上は有事に備えて、アルフレッドさまの出自を聞いております。次期当主様の指揮下に入るのは当然のことです」
そう言って頭を下げる強面の領兵。
さすがはグスタフさんだと、その危機管理能力の高さにただただ感心するばかりだ。
「ありがとうございます。それでは逃げ遅れた人々をお願いします。ここからだと北部のシェルターが近いかと。焦らず走らず大声を出さずに移動させて下さい」
「承知した!」
な
領兵の責任者と思われる人物が、胸をトンと叩いて胸を張る。
領兵のその笑顔に、僕は頼もしさを覚えるのだった。
とりあえずは、喫緊の課題を何とかできたと胸を撫で下ろした僕は、
これはブランが持つ指輪を目印として、その周辺を確認する魔術だった。
そして僕はそこに写った光景に言葉を失う。
―――――真っ黒に焼け焦げたブランが地面に倒れ伏していたのだった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
お久しぶりです。
いよいよ筋道は固まったので、出来るだけ早く更新していきたいと思います。
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