第154話 反聴内視(はんちょうないし)
「うひゃうひゃうひゃ……。若い、若いなぁ〜」
「ホント、バカよね。結局、応援の手間を掛けさせてさぁ……」
「そうだぞ、小僧ども。こんな時こそ先達に学ぶべきなんだ」
「でも、こっちはこっちで、騙されてたんだもんねぇ」
「巧言令色に騙されて……」
「まぁ、この年の頃は、
「ああ、あったあった。冒険者デビューして大物を狩ったり、誰にもマネ出来ない偉業を達成したりするんだって言ってたっけ…………」
「そんなこと出来っこねぇんだ!普通はな……」
そう言った冒険者は、チラリと最近ギルドの話題を独占しているふたりの様子を見る。
そこには、
「いいか!?あのふたりだけは別ッ!凡人は凡人なりに、ゆっくりと力をつければいいんだぞ!」
そんな貴重な先輩冒険者たちからの意見を拝聴しているのは、この宴の主役である【輝道の戦士】と【反逆の隻眼】の面々であった。
方や人を見る目が無くて、先達に騙された者たち。
方や人に任せる判断が出来ずに、先達に迷惑をかけた者たち。
どちらも、非常に肩身が狭い思いをしていた。
もちろん、まだ成人には至っていないので酒も飲めず、ひたすら先輩冒険者たちの指導という名の戯言を聞く時間を過ごしていた。
相手は酔っ払いなので、話はクドい上に支離滅裂。
しかも、隙あらば自分たちの自慢話まで始まるので、もはや苦痛であった。
だが、そんな時間こそが自分たちの貴重な糧となると言われてしまえば、少年たちに否やと応えられるはずもない。
実際、少年たち同様に周囲に迷惑をかけたものの生き残る幸運に与った者たちは、全てこのような宴の席で同じ経験をしてきている。
故に、中には同情してくれる者たちもいて、少年たちの傷心を幾ばくかは癒やしてもいた。
「ルル……。俺たちを助けに来たばっかりに、本当にゴメン……」
「あん?」
先輩冒険者たちの
「俺たちがバカだったから騙されて……」
「それは仕方ねえよ。俺たちだって、立場が違えばどうだったか――」
「それでも、もっと考えるべきだったんだ。
「そんなことどうでもいい。お前たちは仲間だ。これからも俺は、仲間が危機に陥ったら助けに行く………あがっ!!」
そんな決意を告げた瞬間、ソウシのアタマに強い衝撃が走る。
「そんなバカなことばかり言ってやがるから、人様に迷惑をかけるんだ!!」
それは、【
顔を赤くして彼は、心の底から怒りにうち震えていた。
「師匠……」
「お前が先走ったせいで、余計に厄介なことになったって自覚はねぇのか!」
「そりゃあさるさ。でも、俺は仲間が窮地に陥ったって聞いて、黙っているようなことは出来ない」
「それが仲間、ひいてはギルドの連中まで危険に巻き込むとしてもか…………」
「それは違う!俺はどんなときでも助けに行けるように力をつけたいんだ。今回も助けに行ったつもりでいたが、無力だった。
「お前……」
「でも、逆にそれを見て、不可能じゃないっても思えたんだ。
「……………そうか」
ルルの力強い宣言を聞いて、ゴメスは遠い目をする。
それは、どこか昔を顧みるような、そんな表情をしていた。
すると、そんな決意を聞いたノアがポツリとこぼす。
「ルルはすごいよ……」
「あん?お前だってそうだろ?これからもっと力をつけていかなきゃ……」
「いや、
「はっ!?はぁぁぁぁぁ!?どどどど…………どういうことだってばよ!?」
「今日の宴を迎えるに、帰ってきてから3日経ってるだろ。その間、俺たちはずっと夜も眠れないんだよ。目をつぶると襲われた光景が目の前に蘇って…………」
「そんなこと…………」
「ああ、心配かけたくなかったからね。ただ、こうして外に出たのも、あの日以来なんだよ。もちろん、人づてに
「だったら……。もう、あんなことなんて起こりゃしねえよ……」
「…………うん。それは分かってる……。でも、みんなと話し合って、今回の原因となった責任を取るならって…………」
「嘘だ!嘘だ!嘘だ!絶対に、絶対に許さねえぞ!俺たちはみんなで名を上げようって誓ったじゃねえか!」
「……ゴメン」
そう謝るノアの瞳には大粒の涙が光っていた。
すると、まだ納得のいかないルルの頭に、優しく手のひらが載せられる。
それは、ルルたちの師匠の手であった。
「察してやれ。いったん心が折れちまったら、もう立ち上がれねぇんだ。俺はそんなヤツらを何人も見てきた……」
「師匠…………」
ルルがゴメスを見上げると、彼は優しくその頭をナデながら続ける。
「そして、
「えっ!?嘘だろ!?」
「本当だ」
「まさか、俺たちのせいで?だったら俺た……」
「違う。歳をとって冒険者としてのギラギラした気持ちが薄れちまったんだよ」
「気持ちって……」
「昔は俺たちもお前らのように血気盛んだった。仲間が危険に晒されたら、何も取らずに駆けつけるくらいに、な。当時はそれが当たり前だと思ってたんだ。だけど、いつしか俺たちはそんな無茶を忘れちまった」
ゴメスは深いため息をつくと続ける。
「守りを覚えちまったんだよ。冒険者なのに冒険者が出来なくなっちまった。今回の件だって…………」
「でも、師匠たちが応援を呼んでくれたから…………」
「ああ、対応としてはそれが満点だった。だけど、冒険者としてはちょっとな……」
「どうして……、どうしてみんなそんなこと言うんだよ。嘘だろ?俺たちを反省させるために、わざとそう言ってるんだろ?」
「嘘じゃねえよ。決まったことだ」
「師匠!もっともっと教えてくれよ!じゃなきゃ、俺たち、力がつかねえじゃねえかよ」
「悪いな……」
もうルルは人目もはばからず、泣きじゃくっていた。
今更ながらに、自分たちの浅はかな行動によってもたらされた様々な結末を目の当たりにして、ようやく自分たちの愚かさを実感したのだった。
「師匠!俺たちは何でもする!だから……だから……考え直してくれよ!」
「………………」
いつもは絶対に頭など撫でない師匠が、こんなふうに接している時点で気づくべきだったのだ。
「いい冒険者になれよ……」
「師匠ッ……………………」
ルルが言葉を失い、がっくりとうなだれた、そのとき、そこに高笑いをしながら乱入者がやってくる。
「話は聞かせてもらった!」
「ば〜ん!」
そんな湿った雰囲気をぶち壊すがことく、話に割り込んできたのは、アルフレッドとブランのふたりだった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
そりゃあ、心も真っ二つに折れるわ。
そして某M○Rのキバ○シのように現れたアルフレッド。
ちなみに効果音を担当したのはブランです。
付き合いが長いので、アルの無茶や訳の分からないボケにもついていける唯一無二の人物です。
はてさてどうなるやら、次回をお待ち下さい。
モチベーションに繋がりますので、★あるいはレビューでの評価をお願いします。
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