第151話 一六勝負(いちろくしょうぶ)
仮面姿のお姉さんについては、意識を取り戻すと僕たちとは別に帰っていったので、光の扉から出てきたのは救出に向かった僕らと、救出された2パーティーの面々だけとなる。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「すごい…………。ホントに帰ってきた」
「ひい、ふう、み…………。全員だ!全員いるぞ!」
「大穴キターーーーーーーーーーーー!!!」
………………おい。
どうやら、僕らがきちんと【輝道の戦士】たちを救出できるか賭けていたようだ。
流石にそれは不謹慎だろうと、文句をつけたくなったが、そこにひとりの男が現れる。
「ガッハッハ!だから言ったではないか!【豊穣の大地】に加え、【昇龍】と【龍雲】が向かったのじゃから大丈夫だと」
冒険者ギルドのマスターでありながら、この街を治める【アグニス】男爵その人だ。
何で、この人までがこんなことに関わってるの、と思った僕の肩を【豊穣の大地】のリーダーであるゴメスさんが軽く叩く。
「これは、ギルドなりのやり方なんだ」
「えっ!?」
「新人たちが犠牲になるかも知れないなんて、誰もいたたまれないだろう?」
「…………そう、ですね」
「だが、我々は多くの依頼をこなすために冒険に出なければならない。気が乗らないから休みなんてのをみんながやったら、ギルドが回らなくなってしまう。だけど、そんな静まり返った雰囲気や、テンションが落ちている状況ってのはやっぱり危険だ」
「だからあえて、このようなことを…………」
「まぁ、それは建前だったりもする。で、中には本当にのめりこむ者もいない訳では無いがな」
ゴメスさんが顎で指した方向に目を向けると、ガックリと膝から崩れ落ちたAランクの冒険者【シピ】さんの姿が。
「いくら、アルくんたちでも、全員無事はさすがに無いだろうと思ったのに…………」
………………おい。
あの人は、いったいどんな状況に賭けたんだ?
「ちょっと殴ってくる」
すると、ウチの相棒も同じことを思ったらしくスタスタとシピさんのもとへと向かっていく。
「何をするッスか、って、ブランちゃん?ちょっ、ちょっと待つッス!!決してブランちゃんたちが失敗するって思ってたワケじゃなくて、それでも新人さんたちを救出するには間に合わないだろうって…………。いや、アタシがいたらもちろん救出には行ってたッスよ。ってか、痛い!痛い!尻尾は止めるッス!えっ、修練場ッ!?ダメ、ダメッス!!嫌、嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
いくら凄腕の斥候職だったとしても、こと近接戦闘に関してはゴリゴリの武闘派であるブランが勝る。
ブランはシピさんの首根っこを掴むと、そのまま修練場へと消えていく。
以前、僕らが不良冒険者に囲まれて決闘をした場所だね。
「いやあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」
ドップラー効果を残してシピさんが引きずられていく。
それを見送る僕とゴメスさん。
南無南無………………。
どうか、お手柔らかに…………。
「ま、まあ。他の冒険者たちの雰囲気を上げるには最適だ。で、仮に犠牲者が出てしまったようなときにはそこに集まった金で葬儀を依頼することになる訳だな」
「ああ、なるほど。そんな意味合いがあるんですね。じゃあ、今回のように犠牲者が出なかった場合は?」
「そんなの決まってるじゃねえか」
ゴメスさんがニヤリと笑うのと同時に、ギルドマスターからの声がかかる。
「おう、それじゃあここは俺の持ちだ!野郎ども、新人たちの生還を祝って飲むぞ!!!」
「「「「おおおおおおおおおおおおお!!」」」」
建物が揺れるほどの歓声が巻き起こる。
「これがギルド流ってヤツさ」
ゴメンさんは得意げに、僕へそう告げるのであった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
投稿ミスでご迷惑をおかけしたので、お詫びの投稿です。
ちょっと幕間的なところなので、新人たちへの苦言等は次回に持ち越しですね。
次回もご期待下さい。
モチベーションに繋がりますので、★あるいはレビューでの評価をお願いします。
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