第146話 上命下達(じょうめいかたつ)

 扉を抜けると、そこは戦場だった。

 突然の乱入者である僕らに対して、狩りを邪魔された蝎獅マンティコアたちは明らかに怒り狂っている。

 絶えることのない獣の咆哮が周囲に轟いている。



 まずは、目の前の状況を確認しよう。 


 蝎獅マンティコアは、僕とブランで数を減らしているが、まだ十数匹はいる模様。

 コイツらマンティコアは、群れでわざわざこの浅層までやってきたのかな?

 


 見れば、奥でふんぞり返っているのは身体が大きい個体はかり。


 真っ先に僕やブランが屠った個体は、それよりもひと回りもふた回りも身体が小さめなものばかりだった。

 ということは、子どもだったってことかな?


 そう考えると、ここに倒れている連中は、子どもの狩りの練習台にさせられたってことだろうか?

 前世でもライオンなどは、子どもに狩りの練習をさせるって聞いたことがある。

蝎獅マンティコアにも、獅子の頭があるから似たような習性なんだろう。


 まぁ、そのおかげで、【反逆の隻眼】たちにまだ生命があるのだから、不幸中の幸いとも言えるだろうが。



 次に、倒れている人々だが、これは全部で9人。

 うん、【輝道の戦士】や【反逆の隻眼】の連中は全員いるな。


 あとは、一番酷い怪我をしている仮面姿の女性。


 この女性は、前世で言うところのレオタードに近い、肌にピッタリとした服装をしている。

 某仮面騎士よりも、戦隊ヒーローに近いかもしれないなぁ。

 見た感じだと、この人が一番怪我がひどいかも知れない。

 予備選別トリアージをしてみないと詳しくは分からないが、一見してみただけでも生命にもかかわるほどの大怪我だ。


 そして、彼我の戦力だが、ブランは問題なく戦えているが、蝎獅マンティコアの素早い動きに簡単には仕留めきれない。

 【豊穣の大地ゴメスさんたち】は、数頭の蝎獅マンティコアと渡り合っているが、倒すまでには至っていない。

 僕も参戦すれば、もう少し楽になるだろうけど、倒れてる人々を癒やすのにどれだけ魔力を奪われるか予想がつかない。


 下手に動かせば、より症状が悪化しそうな者も何人かいる。

 ここで治療するのが最善であろう。



 だが、そうすると明らかに手札が足りない。



 となれば……。

 非常に……非常に……不本意ではあるが、アイツらに頼らなければならない。



 僕は牽制のため、周囲に氷の柱を突き立てると、予備選別トリアージのために倒れてる者たちに向き直る。

 ざっと見ても生命に関わるほどに大怪我している者が多い。

 これは時間がかかりそうだ。


 そこで僕は、苦肉の策を実行に移すことにする。

 

 僕は振り返ることもせずに指示を出す。



「【蒼穹の金竜】!時間を稼げ!5分でいい!」



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


『紅蓮〜』の一番の敵は四字熟語。

なかなか、いいタイトルが見つからなかったり、逆にあまりにも有名すぎると後に取っておきたいと悩んだり……。


 最近、拙作の題名を続けて読むと、お経のように聞こえることが判明。

 まぁ、どうでもいいことですが……。


 そして、秘蔵っ子の出陣です。

 はてさてどうなることやら。

 

 応援をいただいてやる気が出たので、明日も更新。

 頑張ります!



 モチベーションに繋がりますので、★あるいはレビューでの評価をお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る