第125話 鎧袖一触(がいしゅういっしょく)
流行り病で寝すぎて日にちの感覚がなくなっていました。
遅ればせながら、更新します。
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開始の合図と同時に落し穴を用意した結果、【輝道の戦士】の連中は全員が落下。
【反逆の隻眼】の方は、リーダーが駆け出そうとした仲間の首元を引っ張って押し留めたため、かろうじて転落を免れている。
しかし、彼らがいる場所以外は周辺の悉くが穴。
いわゆる、逆ドーナツのような状況であるため、落し穴を越える術がない彼らにとって、その後の時間は僕の魔術の的となるばかりだった。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
僕は真っ先に反撃されるおそれがあった弓士を、無詠唱の【氷槍(ランケア・グラキエス)】で穴に叩き落とす。
残る3人は斥候と剣士と拳士。
もはや、遠距離から僕を攻撃できる手段はない。
そう考えると、魔術師がいる
今更だけど……。
そもそも、この世界基準だと、魔術に接する機会が多い貴族の子女が魔術師になるケースがほとんどだ。
となると魔術師の【カノン】の過去が気になるところだな。
そんなことを考えていると、突然に【反逆の隻眼】の残りの面々が石を拾って投げつけてくる。
確かに、攻撃が当たればという条件付けだったから、それもアリと言えばアリだな。
限定された条件の中、勝ち筋を見出そうとするその気構えには感心する。
どうやら殴られながらも、彼らはよく鍛えられているようだ。
――――だが。
「ああっ!!」
「畜生、汚え!」
「なんで……」
彼らの悲鳴が聞こえるように、全ての石は僕が展開している結界に弾かれていた。
うるさい、これが戦いだ。
攻撃手段が無くなったと悟ると、あとはギャンギャンと文句を言い出した。
その気持ちは分かるが、手を抜かないと決めてたんでね。
僕は最後にはこれと決めていた魔術を展開する。
ーーーー【八寒地獄】第一獄【頞部陀(あぶだ)】
インパクトという意味では抜群だ。
何しろ、無数の氷の飛礫が空一面を覆っているのだから。
夜空にびっしりと浮かぶ氷の粒が、照明の反射を受けて不気味に光っている。
それは、僕に対する彼らにとって死神の大鎌のようにも見えていることだろう。
「ああああああああ………………」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「ゴメンね、お姉ちゃんもう…………死ぬ」
もはや、残りの三人に継戦の意欲はない。
その場にへたり込み号泣している。
これにて目標達成。
さすがにこれで終わりだろうと、僕が立会人であるソウシに目を向けると、アイツは満面の笑みで頷きながら親指を立てた。
(いいの!?)
(やっちゃってください!)
(えええええええええ!)
(見せてやってください)
そんなやり取りを視線で交わした僕。
ホントにいいの?
そう思ってギャラリーを振り返ると、【蒼穹の金竜】の残りのメンバーも、壊れた首振り人形のように何度も何度も頷いている。
お前ら、自分たちがやられたようなことを、他人にも味あわせたいだけだろ?
思わずため息をこぼすが、立会人が終了の合図をしてくれないのだから仕方ない。
僕は3人を傷つけないように、その足元を目がけて飛礫を飛ばす。
「「「うぎゃぁぁぁぉぁぁぉぁぁぁ!!!」」」
大地を揺るがす轟音とともに彼らの足もとが崩れ落ち、3人もまた真っ逆さまに穴に落ちていく。
「これをもって兄貴の勝ち!」
そう宣言されたものの、周りを見渡せばほぼ全員がドン引き。
………………だよね。
そんな中、ブランとミクちゃんの拍手だけが虚しく響き渡っていた。
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拙作で『第8回カクヨムWeb小説コンテスト』に参加します。
みなさまの応援をいただけたら幸いです。
追伸
『無自覚英雄記〜知らずに教えを受けていた師匠らは興国の英雄たちでした〜』
『自己評価の低い最強』
の2作品もエントリーしますので、そちらにもお力添えをいただけたら幸いです。
更新は三日後です。
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