第124話 轍鮒之急(てっぷのきゅう)
流行り病に罹りまして、更新が遅れました。
熱も下がって来たのですが、まだ体の節々が痛む状況です。
みなさまも、お身体にはお気をつけ下さい。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「そこまでだ」
僕は騒然とする食堂で、あえて見え見えの殺気を飛ばす。
さすがに、そのプレッシャーには初心者と言えども気づくようで、一瞬にして場が静まり返る。
「あ……あの……。アルフレッドさん、この子たちのことは私が……」
「いえ、明らかに売られたケンカですので、ここは僕が受けて立ちます」
「アル……」
「今度は僕が怒る番だ」
ジュリアさんが慌てて仲介に入ろうとするが、もうこれは徹底的にやるべきだと判断した。
何しろ、ウチのブランに「ブス」と…………。
いや、子どもだから、語彙が少なくてそんな言葉が出たとも考えられないこともない。
だが、よりによってブランをブスだと?
目が腐ってるのか?
自分自身が想像以上に怒り狂っているのに驚く僕。
それだけ、大事な存在なのだと再確認したようなものだ。
そうして、僕を心配そうに見つめるブランのアタマを撫でると、僕はこの世間知らずたちを泣くまで追い込むことにした。
【蒼穹の金竜】のときのような幻術では生ぬるい。
その身をもって、思い知ってもらおうか。
僕は食堂のテーブルの上に財布を置くと【反逆の隻眼】【輝道の戦士】の面々に告げる。
「勝負をしよう。八対一で結構。僕の身体に触れたらこの財布ごとやる」
「はぁ?バカにすんなよ!」
「このメンバーとひとりでやるのかよ」
「うわっ!スゴい……」
「金貨ばっかりだ……」
すると、案の定挑発に乗ってきた。
中には財布の中身を覗いて、嬉しそうな声を上げている連中もいる。
僕が何気に【蒼穹の金竜】の面々に視線を向けると、誰も彼もが額に手を置いて首を振っている。
どうやら彼らは、これまでのやり取りから身に沁みて理解したようだ。
★★
そして、僕らは孤児院の庭で手合わせを行うこととした。
もう暗いからと、ジュリアさんが引き止めようとするが、僕が無詠唱で光の玉をあちこちに浮かべていく。
「おい、アイツ、今、詠唱してたか?」
「まさか……」
「そういえば、赤髪と白髪の子ども二人がすごい勢いでランクアップしてるって……」
「じゃあ、あいつが【無詠】なの?」
僕が無詠唱で魔術を展開したのを見て、僕が何者かを推測しているのは【反逆の隻眼】のメンバー。
先達にガンガン殴られていた連中だな。
だけど、先に出した無詠唱というヒントに気づくのはなかなか鍛えられている気がする。
「矢を当てるだけでも良いんだから楽だね。まぁ、その前に僕とレイが叩きのめすけどね」
「まぁ、おれっちの弓に期待してよ」
「アウルさんに褒められている私たちに隙はないよ」
「なぁ、先にアイツを殴ったヤツが総取りだろ?」
それに比べて、【輝道の戦士】の面々ときたら、もう終わったときの話をしている。
よっぽどの実力があるのか、単なるバカか。
ともかく、このあとの戦い方で判断してみよう。
「じゃあ、俺が立会いをするからな。お前ら、止めるのは今だぞ」
「えっ……、どうする……?」
「そんなの?」
立会いは、【蒼穹の金竜】のソウシ。
彼らを気づかったその言葉に、【反逆の隻眼】の面々が顔を見合わせる。
「いいから、さっさと始めろよ!」
「モタモタしてんなよ」
だが、やる気満々の【輝道の戦士】のメンバーの発言で棄権という雰囲気ではなくなる。
「じゃあ、行くぞ」
「やるしかない!気をつけろよ!」
「「「了解!」」」
「さっさとボコして終わるぞ!」
「「「おうよ!」」」
それぞれのメンバーが、リーダーの言葉に反応する。
そしてついに、手合わせが始まる。
ゆっくりとソウシが手を上げると、号令と一緒に手を下ろす。
「始め!」
「「「「うおおおおおおお…………?ギャァァァァァァァァァァァァ!!!」」」」
そして、開始直後【輝道の戦士】の面々は、大きな落とし穴に落ちていく。
これは僕が、号令と同時に展開した【
………………アイツら、やっぱりダメだったな。
★★★★★★★★★★★★★★★★★
拙作で『第8回カクヨムWeb小説コンテスト』に参加します。
みなさまの応援をいただけたら幸いです。
追伸
『無自覚英雄記〜知らずに教えを受けていた師匠らは興国の英雄たちでした〜』
『自己評価の低い最強』
の2作品もエントリーしますので、そちらにもお力添えをいただけたら幸いです。
更新は三日後です。
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