第115話 人材育成(じんざいいくせい)
この孤児院については、問題点が3つ。
最も大きいのは、協力者とか言う者の存在。
聞いた限りだと、何らかの不正に関与しているのは明らか。
どこまで、孤児院を食い物にしているのかは判然としないが、これは然るべき者に介入を依頼するべきだろう。
ちなみに、この孤児院は教会に併設されているので、その一切の権限は、この世界で最も多くの信者を抱える【
そのため、領主は補助金は出すが内部への関与は認められていなかったりもする。
おそらくは、この制度を協力者とやらに悪用されていると思われる。
そこで僕は、【
あの人は、こういったことには厳格だから、徹底的にやってくれることだろう。
フフフフフフ……。
続いて、第二の問題点は、
こちらは、心当たりがあるようで、数年前にとある冒険者が治療の甲斐もなく片腕を失うことがあり、それ以来、治癒魔術がうまく使えなくなってしまったのだとか。
しかも、この冒険者はジュリアさんとは憎からずに思う関係だったようで、彼女としては二重の心の傷となってしまったようだ。
「あの二人はまだ、キスもしたことなかったんじゃないかしら」
とは、僕にジュリアさんの詳しい話を教えてくれた【ララ】ちゃん(6歳)の言。
女の子ってすごくマセてるなって感じた今日このごろでした。
まぁ、こちらはいくらでもやりようはある。
要は、いろいろとショックがあって、これまで治癒していたイメージが揺らいでしまっただけのことだろう。
魔術に関しては、この世界でも上位だと自負する以
上、これまで以上に治癒魔術を使えるようにしてみせよう。
そして第三の問題点が、この孤児院、いや教会を含めて稼ぎを得る手段がないということだ。
それでも、教会はきれいに復元した。
ジュリアさんの治癒魔術もこれまで以上になるくらい鍛える。
それならば、ゆくゆくは遠のいた冒険者達の足も戻ってくることだろう。
だが、それまではどうする?
冒険者になった子どもたちの稼ぎに頼るのか?
――――否。
稼ぐ手段がないなら、作ればいいじゃないか。
と言うことで、僕とブランは子どもたちの中からとある適性を持った人材を探していた。
そして、ふたりもの適性者が見つかったのだ。
それが、ブランが連れてきた【レナ】ちゃんと【ミク】ちゃんだった。
ふたりともまだ7歳。
だが、それでも才能があることには変わりない。
僕たちが探していたのは【
そう、この教会でも生卵、マヨネーズやプリンの販売を行うことにしたのだった。
僕が、ふたりに魔術を教えて生卵等の販売を行うと宣言すると、ジュリアさんは大きく首をふるとこれを否定する。
「そんなことは無理です。平民が魔術なんて……」
「大丈夫です。諦めなければ適いますよ」
「そんな……」
「ちなみに僕は無詠唱で魔術が使えます。ほら」
「嘘……つ」
そう言って僕は、手のひらに大きな雪の球を造り上げる。
「ええっ!?ホントだ!」
「何にも言ってなかったよ!」
そして、それに驚いたのは、ジュリアさんばかりではなかった。
一緒にいたレナちゃんやミクちゃんのふたりも、あまりのことに目を丸くして驚いている。
「そして、ブランは獣人なのに魔術が使えます」
「ん。白き雪よ」
すると、ブランも詠唱破棄で魔術を展開する。
ブランの手のひらにも、小さな雪の球が生まれる。
ついさっき、ブランが魔術を使ったのを見ていたふたりであったが、改めて目の前で魔術を使われるとそれが夢ではなかったことを確信する。
「えっ……」
「獣人なのに……」
「すごい……」
もはや、3人は大きく口を開けてポカンとしている。
獣人が魔術を使えないというのは、太陽が東から昇るくらいに人々の常識だ。
ブランが手のひらの球を、僕が造った雪の球の上に乗せる。
そして、どこからか取り出したボタンを目に埋め込んでいく。
こうして、春だというのに、季節外れの小さな雪だるまが出来上がる。
「いかがですか?僕らに任せれば、ふたりは魔術が使えるようになりますし、ジュリアさんの治癒魔術もこれまで以上の効果になることをお約束しますよ」
僕がそう告げると、孤児院の3人は無言で何度も頷く。
どうやら、理解してもらえたようだ。
さあ、やると決まれば徹底的にやろうじゃないか。
僕が満足そうに笑う姿を、机の上の可愛らしい雪だるまがずっと見つめているのであった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
説明回になってしまいましたね。
ということで、マヨとプリンで外貨獲得に動きます。
教会との取り決めでは、【
ちなみに、無理やり使える者を増やしてはならないとの取り決めはありませんでした(笑)
モチベーションに繋がりますので、★あるいはレビューでの評価をお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます