第113話 環境改善(かんきょうかいぜん)
「こんなに差し入れをいただいて、ありがとうございます」
僕らが教会に併設された孤児院を訪れると、プレセア先生と同年代くらいの
彼女が、たったひとりで先代から引き継いだ教会や孤児院を切り盛りしている【ジュリア】さんであった。
「この度、ソウシたちを指導することになったのですが、これも何かの縁。お手伝いでも出来ることがあればと思い、お邪魔しました」
「ああ、主よ。このような貴重な出会いに感謝します」
このような会話がなされて、僕とブランの家庭訪問が始まったのだった。
僕が孤児たちの夕飯の準備をしながら、いろいろと聞いたところだと、孤児院の金の管理は数年前から世話になっている協力者に一任しているとのこと。
最近では、物価が上がったために資金繰りに行き詰まっているとか。
もちろん、孤児院として代官に資金援助の要請を行っているものの、協力者の話ではなかなか上手く行ってはいないとのこと。
うん、いろいろと気になるところがあるな……。
まあ、とりあえずは、やることをやろうか。
「ジュリアさん、建物がだいぶ古くなってますが、新しくなるとしたらどうですか?」
「新しく……?ええ、そうなったらどれほどありがたことか……。最近は修繕費にも事欠く有様なものですから……」
あまりにも唐突な話なので、当然のように本気にはしていない。
だったらいいな、程度の回答だ。
そこで僕はもう少し具体的な話をする。
「例えば壁の落書き跡とか、柱の傷とかそんな思い出のようなものが無くなっても大丈夫ですか?」
「……落書き跡?……傷?」
ジュリアさんは、部屋を見渡しながら悲しそうに答える。
「確かにそういったものはあちこちに残っていますが、それはあくまでも思い出。今を生きる子どもたちがより良く暮らすことには勝りませんわ」
具体的に聞いてはみたが、もしも出来たらって感じがありありと見えた。
そうだよね。
まあ、承諾を得られたものとして進めよう。
「実はですね、僕はそれなりの魔術師なんです。【再生(レノヴァーチ)】」
僕は孤児院の壁に手をつくと、あえて声に出して魔術を展開する。
じゃないと、何があったか分からず驚かれちゃうからね。
「「「「「「「うえええええええええええっ!?」」」」」」」
…………声に出しても驚かれてしまった。
「ああああああああああああ……あ、兄貴。これって……」
真っ先に声をかけてきた【蒼穹の金竜】のソウシだったが、驚きすぎてろれつが回らなくなっている。
「あ」が多すぎだろ。
【再生(レノヴァーチ)】は、そのものをあるべき姿に巻き戻すイメージなので、どこまでするかは術者次第。
実は治癒魔術にも応用できたりする。
何なら木材やインゴットといった材料そのものにまでも戻すことは可能だが、さすがにそんな馬鹿なことはしない。
きちんと、新築の時点で止めておいたよ。
突然に孤児院がピカピカになったことで、あちこちから悲鳴と歓声が上がっている。
「こんなことって……」
あまりのことで二の句も出ないジュリアさん。
結構【再生(レノヴァーチ)】は重宝するんだけど、あまりこれをやり過ぎると、大工さんや鍛冶師といった物を作る人々の仕事を奪うことになり、いろいろと経済的に回らなくなってしまうことからあまり多用はしていない。
まあ、今回だけは特別だね。
「とりあえず、改修工事が必要ないようにしといた。あと、お前ら並べ。そのボロボロの服をキレイにするから……」
「へっ……?」
「返事!」
「はっ、はい!!」
こうして僕は、食事の手伝いに来ていた子どもたちが着ている服もキレイにしていく。
ツギハギだらけのみすぼらしい格好が、それなりに見られる姿になった。
その他の子どもたちは、遊んであげているブランが何とかしているはずだ。
これで、衣食住は全て改善した。
あとは、根本的な原因を取り除くだけだ。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
いきなり常識外をかましてますが、根本的な原因とは?
誤字が多い……。
反省してます。
三日後の更新をお待ち下さい。
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