第112話 家庭訪問(かていほうもん)

「…………と、言うことなんです」


 僕が指導をする【蒼穹の金竜】の面々に、どうしてこうも討伐依頼を受けたがっていたのかを尋ねると、彼らは先程までの態度が嘘のように素直に語りだした。


 それは、彼らの住む孤児院の経営が上手く行っていないためであった。

 まだ、12〜13歳の成人前の彼らは、まだ孤児院に世話になる立場である。

 そのため、いかに早くひとり立ちして、孤児院から独立するかは重要な問題であった。

 その上、ここ数年は食材や生活雑貨等の取引きが予算を圧迫していたらしい。

 そう、例のカイウス商会のダンピング紛いの商いが、こんなところにも影を落としていたワケだ。


「…………どう思う?」

「孤児院自体に問題があると思う」

「だよね」

「おじいちゃんなら、きちんと支援はしているはず」

「そこなんだよな……」


 そんな会話を交わす僕とブラン。

 となれば、やることはひとつ。

 僕はポンと手を叩くと、笑顔で告げる。


「よし、決まった。これから、家庭訪問をします」

「「「「えええええええええっ!?」」」」


         ★★


 僕の突然の提案に驚いていた【蒼穹の金竜】たち。


 当初は、「今日の分の稼ぎが」だとか「狩りの仕方を教えて欲しい」だとか騒いでいたが、ブランが財布を少年たちの目の前に置くと黙り込む。


「差し入れをするから、食材を買って来い」

「えっ……!?」

「今日は何が食べたい?」

「こ、こんなに……?」

「肉でも野菜でも、何でも買って来い」

「えええっ!?」

「ついでに、それをお前たちへの依頼にする」

「マジで!?」

「分かったら走る!」

「「「「はいっ!!!」」」」


 あっという間に、少年たちの気持ちを鷲掴みにしてしまったブラン。

 恐ろしい子……。


 そうして、少年たちに連れられてやって来たのが、街外れにある寂れた教会だった。

 毎日が生命のやり取りをする冒険者たちにとって、教会お抱えの治癒師に世話になったり、験を担ぐのに神に祈ったりするため、教会となるとたいていは潤っているんだけど、どうやらここは違うようだ。


 聞けば治癒師の修道女シスターと、金銭を管理する協力者がいて運営をしているようだ。

 こんなボロボロの教会では、有り難みも糞もないため、験を担ぐために通う者は足が遠のき、最近では修道女シスターの治癒魔術の効果も落ちてきているために、さらに訪れる者が減ってきているのだとか。


「おおう……。気持ちいいほどの悪循環だ……」

「ここは幽霊屋敷……?」

「姐御……それは酷えよ」

「これでもみんなで手入れしているんだよ」

「確かに、ボロボロだよね……」

「でも、お金が無いから……」


 ブランの言葉に必死に反論しようとする【蒼穹の金竜】の面々だが、終いには自分たちもボロなのを認めてしまった。


 ダメじゃん!


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


ボロボロの教会。

はてさて、アルフレッドたちはどう動くのか、三日後をお待ち下さい。


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