第111話 南柯之夢(なんかのゆめ)
本作の第52話と第99話の内容が一部重複しているとの、貴重な御指摘があり、確認したところ思い切りかぶっていました。
第99話をほぼ書き下ろしましたので、ご一読いただけると幸いです。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
八寒地獄第四獄【臛臛婆(かかば)】は、相手に幻覚を見せる魔術である。
それも、痛みまで伴うという強力かつ凶悪な幻覚だ。
これは、以前の決闘騒ぎのときに使った【幻視(イルジオン)】よりもはるかにタチが悪い。
人の脳は摩訶不思議なもので、前世の例で言えば熱くないアイロンを熱いと信じ込ませて腕に当てたら、実際に火傷のような症状が現れたとか。
要は、偽薬で有名なプラシーボ効果の一例のようなことだが、この魔術はそれがあまりにも強力すぎるために、実際に幻覚――夢の中で殺されると死んでしまうほどだ。
そこで今回は、死ぬ寸前で目が覚めるようにはしておいた。
この魔術の特徴として、幻覚の内容まである程度決めることが出来たので、【蒼穹の金竜】の面々には大森林内で予期せぬ出来事が起こった場合の夢を見てもらった訳だ。
一応、ジャック・オー・ランタンが徘徊しているというヒントは盛り込んでおいたのだが、全員が早々に目を覚ましたということから見ると、分からなかったか無視をしたか。
ともかく、自分たちだけでは力不足だったということだ。
「い、いったい俺は……」
涙で顔をぐしゃぐしゃにしたソウシが、おそるおそる僕に問いかけて来る。
そこで僕はこれまでに他のメンバーに説明したように、これが魔術による幻覚であったことを告げる。
すると彼は、再び大粒の涙を流しながら、安堵の表情を浮かべるのであった。
「良かった……良かった、良かったぁぁぁぁぁぁ」
そうして、彼が落ち着きを取り戻すまでもうしばらくの時を要したのであった。
「これは実際にあり得ることだからね」
僕がようやく落ち着いた【蒼穹の金竜】の面々に、そう説明を始める。
どうやら、効果は絶大だったようで、彼らは真剣な面持ちで僕の話を聞こうとしている…………何故か正座して。
「「「「はい!!」」」」
なんか、返事も揃ってるし。
ブランはその隣で満足そうにうなずいている。
う〜ん。
ほんのちょっとだけ、やらかしてしまった気もする。
あまりにも後先の事を考え無さ過ぎるから、軽〜く怖い思いをしてもらおうと考えていただけなんだが……。
その結果、【蒼穹の金竜】の面々は、夢から覚めると揃って謝罪にやってきたのだ。
以前の態度は何だったのかと思うほどの変貌ブリに、僕はただ驚くばかりだった
ブラン、良くやったってハンドサインを送らなくてもいいから。
こうして僕らは、改めて【蒼穹の金竜】に指導を行うことになったのだ。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
手は出してないからセーフ……。
心の傷は思いっきり残りそうですが。
モチベーションに繋がりますので、★あるいはレビューでの評価を、お願いします。
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