第109話 無礼千万(ぶれいせんばん)
第82話 虎口余生(ここうよせい)で、男たちを倒したのを単なる氷の魔術から、八寒地獄に変更しています。
8つもあるので少しずつ出して行かないと、連載が終わってしまうのではないかと危惧しました(笑)
ご一読いただければ幸いです。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「何だよ、俺たちの指導者ってこんなガキかよ」
「この間、冒険者になったばかりって話じゃない?」
「あっはっは!なあボウズ、指導はいらねえからよ、さっさと狩りを認めろや」
「やめなよ、可哀想じゃないか」
「【カズキ】、カワイイのが好きだからって……」
「そうじゃないよ、ただ、教えてくれる人にその態度はないんじゃないかなって……」
「ハハハッ、どうせ金でも積んだか、どこぞの貴族の関係者ってとこだろ?」
「そうそう、泊をつけるためにランクを買ったんだよ」
「そうね。じゃなければこんなに早くCランクなんて無理だものね」
僕は今、目の前で繰り返される誹謗中傷に耐えることで精いっぱいであった。
ブランなど僕が手を握っていなければ、この連中を八つ裂きにしかねないほどの表情だ。
ブラン、ステイ!ステイ!
ギルドマスターのグスタフさんから、指導をするようにと預けられた冒険者たちは【蒼穹の金竜】。
僕よりも2つ3つほど年上の少年少女たちであった。
聞けばこの街の孤児院出身らしく、昨日見かけたバワハラを受けていた少年たちや、優しく指導を受けていた少年たちとも同じ孤児院らしい。
「【反逆の隻眼】や【輝道の戦士】は、もう魔物を討伐してるって話だろ?」
「そうだそうだ、とっとと。俺らにも狩らせろよ」
「そうね。私たちの方が冒険者ギルドには詳しいんだから、これ以上聞くこともないわよ」
「ハッ、下働きの頃から出入りしてるしな」
「ってなワケで、俺たちは余計な話は聞かない。それでいいな?」
「あの……、その……」
僕がいくら危険性があるからと言っても、聞く耳を持たない。
そもそも、年下だからとバカにしている。
転生前の日本では、指導する相手にとりあえず話は通じた。
それは、過去の失敗例や、本来あるべき姿とはどんなことかを伝えれば何となく理解してもらえたからだ。
だからこそ、パワハラに頼らずとも指導ができたのだろうが、この世界ではそうは行かない。
そもそも、いつ死んでもおかしくないような刹那的な生活をしているために、この年の少年たちですら死を恐れていない。
否、自分の死というもののイメージが追いつかないのだろう。
あまりにも日常的に隣人が亡くなるような世界だ。
彼らはどこかで、自分や仲間の命を軽く見ているようにも感じた。
このままではマズいと、僕は痛感する。
自分や仲間の命を顧みないということは、どこかで致命的な失敗に直結する可能性が高まる訳だ。
例えば、引き返すことが正しいのにあえて進んでしまったり、仲間の救命を第一にすべきところをクエストの達成を優先してしまって機を失したりと。
「おい、さっさと討伐させろよ」
僕を見下ろしてそう怒鳴りつけるのは、金髪でソバカスの残る顔の【ソウシ】
【蒼穹の金竜】のリーダーで、両手剣の使い手だ。
「もういいよな?」
「俺たちは行くからな」
「じゃあね。これでおしまいでいいでしょ?」
「あの……その……。ごめんなさい」
うん、もうダメ。
こんな奴らを丁寧に指導できるほど、僕は器が大きくない。
とりあえず、申し訳無さそうにしている【カノン】さんは許す。
ただし、残ったお前らテメーらだけはダメだ。
こうなったら、こちらの流儀でやらせてもらおう。
僕は礼儀知らずな少年たちを前に、不敵な笑いを浮かべるのであった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
どこにでも、自分勝手な奴らはいるのですが、やはり異世界。
現代日本とは大違いだということですね。
これからアルフレッドたちがどんな指導を行うか、ご期待下さい。
モチベーションに繋がりますので、★あるいはレビューでの評価をお願いします。
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