第108話 伝統承継(でんとうしょうけい)
「あっはっは、冒険者三日目にしてもう後進の指導とは……」
「笑いごとじゃないですよ……」
今日から僕とブランがお世話になる食堂【
ブランは、アリシアと一緒に今日から泊まる部屋の下見。
時折、アリシアが「同室はダメ!」「何で部屋に穴を開けようとするの!?」「はしたない!」と叫ぶ声が聞こえてくる。
アリシア頑張って。
何とか僕の平穏を獲得して欲しい。
「上のふたりは仲良しだね。あんなに明るく笑うアリシアなんて初めてかも知れないよ」
「ブランはずっと僕と一緒にいますから、どうしても同性の友達っていないので、すごく嬉しいんだと思いますね」
「それは良かった」
するとそこに、配膳を終えたリサさんが会話に加わる。
原材料の目処が立ち、カイウス商会の妨害も無くなったことから、営業を再開した【
そのため、まだ僕たちと会話をする余裕があったのだ。
「それにしても、そのスパルタ式の指導をしてたのって【ゴメス】たちよね」
「【ゴメス】?」
「ああ、現役の冒険者で強面の猿人族といえば【豊穣の大地】のリーダー【ゴメス】しかいないからね」
「すると、その教え方って私たちが原因かしら?」
ん?んんんん?
おかしな話になってきたぞ?
「どういうことですか?」
「だって、ゴメスたちを指導したのって私たちだもん」
「正しくは僕たちのパーティが、だね」
「えええええっ!?」
僕は素直に驚く。
「クソ生意気な小僧だったからね」
「そうだよね、イキって舐めた態度を取るものだからリサがボコボコにしてね……」
「まずは身体に教えこまなきゃならなかったわよね。あの頃は若かったわ」
原因は、この人たちかぁぁぁぁぁぁぁ!!
確かにランドさんたちはかつて冒険者だったとは聞いていたけど、まさか今回のパワハラ冒険者と繋がっていたとは……。
僕はその教え方で、今の若手が苦労しているのだと告げようとすると、ランドさんが先に発言する。
「まぁ、そんなことを言ったら、僕らが教わった時なんてもっと酷かったよね」
「そうね、あなたなんて何度髪を燃やされたかしら」
「そういう君も、あの人にガンガン殴られたしね」
…………待て。
ちょっと嫌な予感がしてきたぞ。
そんなことをする人物に心当たりがある。
いや、まさか。
さすがにそんなことはないよ……ね。
「……あ、あの。ランドさんたちを指導してくれたってのは誰なんです」
「ふふん、聞いて驚かないでよ」
「私たちは、あの【流浪の劫火】に指導を受けたのよ」
やっぱりかあああああああああああああああ!!
確かに、炎にトラウマがある子供に『八熱地獄』を使う人だけれども。
確かに、子供相手に頭が潰れそうなほどのアイアンクローをするような人だけれども。
父さん、あなた達が元凶でしたかぁぁぁぁぁぁ!!
「ん?アルくん、どうしたんだい?」
「ナンデモアリマセン、ゴメンナサイ……」
「様子が変よ」
「スミマセンデシタ、スミマセンデシタ……」
期せずして、ギルドに伝わっているパワハラ気質の流れを知ってしまったようだ。
こうして、伝統技能のように伝わって来てしまったのだろう。
それはまるで、体育会系の部活の悪しき伝統のように……。
僕はガックリと膝をついて、立ち上がる気力すら無くしてしまったのだった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
単純に、ランキングで『紅蓮〜』が『無自覚〜』よりも上位に来て驚きました。
そうなると。ますますヤル気が出てくるものですよね。
3日おきの更新は頑張りたいと思います。
モチベーションに繋がりますので、★あるいはレビューでの評価をお願いいたします。
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