第107話 昇格条件(しょうかくじょうけん)

 突然だが、冒険者ランクの昇格にはふたつの方法がある。


 それは【貢献ポイント】と【討伐ポイント】というものである。

 【貢献ポイント】は、様々な依頼を達成して得られるもので、依頼主からの評価が高ければボーナスポイントが加わったり、ギルドへ貢献してもポイントが加わったりする。

 僕たちが、2ランクアップしたのも、表にはできないものの、ギルドへの多大な貢献があったのでボーナスポイントが加わったという扱いだったはず。


 そして、【討伐ポイント】。

 これは、魔物の討伐ランクに応じて増えるものであり、自分のランクよりも1つ上の魔物を倒せば5回、2つ上の魔物を倒せば1回で昇格するという代物だ。


 同ランクの魔物が倒せることは当然で、それ以上の成果を上げた場合の措置というものだ。

 前世の「金なら一枚、銀なら五枚」のキャッチフレーズを彷彿とさせるが、これが良くできた制度で、冒険者である以上、今回のような上位の魔物と遭遇することも少なくない。

 それを運良く倒せたとして、討伐依頼外だからと何の補償もなければ、その後は誰も戦うことなどしないだろう。   

 そうなると困るのはギルド自身だ。


 出遭った冒険者がその場に踏みとどまって戦えば、倒せるかも知れない。

 だが、ランク外の魔物からだとすぐに逃げられたのでは、討伐が後手後手に回ってしまう。

 

 これを防止するために、冒険者たちが『ちょっとでもやってみてから判断するか』程度を考えてもらえるように餌をぶら下げている訳だ。


 冒険者もランクが上がれば、社会的な地位も高まるし、ギルドからの多大な恩恵も得られるようになる。

 具体的には、Sクラスの冒険者ともなれば下手な貴族よりも高待遇を受けられるようになる訳だ。


 まぁ、何でこんなことを長々と話しているかと言えば、僕たちの現状にあった。


「ランクアップ?僕たちがですか?」

「ああ、キマイラは討伐ランクBだ。今回は討伐ポイント制でのランクアップだな」

「ああ、金のエンジェルですか……」

「あん?」

「何でもありません。でも、本当に良いんですか?流石に三日目にしてCランクって……」

「そこは気にするな、極稀にあることじゃ」

「極稀って……。まぁ、問題ないなら良いですけど……」


 僕がギルドマスターのグスタフさんとそんな会話を交わした結果、Cランクに昇格してしまったのだった。


「あっ、そう言えば……」


 せっかくなので、徒弟制度について思うところを聞いてもらおうと思ったので、先ほど見かけた光景を説明する。

 要は、先達によっては口よりも先に手が出る者もいるということ。

 それでは、萎縮してしまう者もいるのではないかとの懸念であった。


「ふむ……。それも一理あるな……」


 すると、ギルドマスターは顎に手を当ててしばらく考え込む。

 しばらくして、彼はひとつ頷くと僕らに注げる


「よし、お前さんたちももうCランクじゃ。ここでひとつ、若手を指導してくれ」

「えっ?」

「その上で思うところがあれば、さらに上申してもらうということでどうじゃ?」

「ええええええええええええええええええええええ!!」


 こうして僕らはランクアップして早々に、後進の指導に当たることとなったのであった。




★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


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