第67話 大名行列(だいみょうぎょうれつ)
冒険者は誰でもなれる職業だ。
年齢も資格も関係ない。
ただその能力のみが評価される。
礼儀や常識が無くても、ランクを上げていくことは可能だ。
だが、高ランクの依頼になればなるほど、貴族と関わることが増えてくる。
ゆえに、ギルドは独自でランクへの基準を設けている。
具体的には、Bランク以上になるためには、その能力はもちろん、それなりに高位の貴族からの推薦も必要になる。
ランクが上がれば、貴族に匹敵するほどの扱いを受けるのだから、力だけでなく、人柄や礼儀を見られるのは当然だ。
もっとも、たいがいがDランクでその冒険者人生を終えることを考えれば、Cランクと言ったら、平均よりも能力が高い者が辿り着くランクであり、そういった意味ではコイツはそれなりに優秀なのかも知れない。
だが、先ほどちょっと耳にした感じでは、高ランクの冒険者たちは遠征に出ているようだ。
そこに置いていかれるということは、その程度の評価しか得ていないということなのだろう。
そしてその事実が気に食わず、荒れていたのだろうとは予想がつく。
「それじゃ、行きましょうか」
「なにい?うぐっ……」
僕は、豚男が何か言う前に、その身体を凍らせる。
もちろん殺しはしない。
「受付嬢さん、どこかで模擬戦を行える場所はありませんか?」
僕の突然の提案に、受付嬢は無言でうなずき、一方の廊下を指差す。
おそらく、そっちが修練場の入口なのだろう。
僕はそのまま大男を引きずって修練場に向かうことにする。
豚男を固めた氷の摩擦係数を0にすると、あら不思議、カーリングのストーンのようにスルスル滑る。
「やってみる?」
「うん」
ブランがやってみたそうだったので、途中でブランにバトンタッチする。
彼女はそのキレイな毛並みのシッポを左右に振って喜ぶ。
ブランは一見すると、表情に乏しく感情が分かりにくいと思われがちだが、そのシッポの動きを見ればすぐにどんなことを考えているか分かるんだけどなぁ。
豚男は、階段でアタマを打ったようで何かモゴモゴ言ってるが、口元もしっかり凍らせているので聞こえまセーン。
僕たちはあえて、豚男をみんなに見えるように、ハデに修練場まで連れていく。
全身が凍りついて動けない豚男を、ギルド内でわざわざ見えるように引きずって歩く。
そりゃあ目立つよね。
そのため、僕らの後ろを待合室にいた受付嬢や、他の冒険者、騒ぎを聞き付けたギルド職員がぞろぞろと続く。
ちょっとした大名行列気分だ。
大名行列で思い出したが、今のこの光景も江戸時代で言うところの市中引廻しの刑みたいなものだな。
そんなくだらないことを思いつつ、僕は怯えた目で見つめる豚男に冷たく笑いかけるのだった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
もう、氷漬けにされてる時点で勝負ありですが、ざまぁのためにまだまだやりますよ。
やっておしまいという方は、レビューあるいは★での評価をお願いします。
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