第三部 自由奔放(じゆうほんぽう)
第61話 一路順風(いちろじゅんぷう)
本日二話目です。
まだの方は前話をご一読下さい。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
父さんとの模擬戦から数ヶ月、ついに僕が10歳の誕生日を迎えた。
ようやく、冒険者登録が出来る年齢になったのだ。
思えばここに至るまでには、いろんなことがあった。
まず、父さんがついに詠唱破棄を習得し、もはや手に負えないほどの強さを手にしてしまった。
何せ、対峙すれば刹那の時で【八熱地獄】が放たれるのだ。
そこに広がるのはまさに地獄。
これまで、詠唱中に逃げることが唯一の生存手段だったのだがそれすらおぼつかない。
先日も隣国との小競り合いがあったのだが、父さんがフラリと出かけてあっさりと殲滅してしまったようだ。
そして、ついた二つ名が【
何か物々すぎると嘆いていた。
もはや父さんを倒せる魔術師はいないのではないかと思われた……僕以外はね。
あの後、父さんと何度か模擬戦を繰り返したが僕は勝ち越している。
さすがに歴戦の強者だけあって、いくら無詠唱とは言えども作戦負けすることが少なくなかったのだ。
そして、ブランの母親ディアナも魔術を使いこなせるようになった。
僕の説明ではなかなか魔術は身につかなかったのだが、ブランが説明するとあっという間にコツを掴んでしまった。
どうして僕の懇切丁寧な説明では理解しないで、ブランの「ギュオオオ」だの「グッ」だのと言った擬音まみれの説明で理解出来るのか謎だ。
解せぬ。
その結果、再び辺境伯領最強の座に返り咲いたディアナ。
瞬間移動とも思えるほどの魔術による高速移動を用いて、魔術師たちを一方的に蹂躙するのであった。
僕の無詠唱魔術でも、次の瞬間には狙った場所にいないのだから、当てられるはずもない。
おかげで、模擬戦は絶賛負け越し中だ。
そんなディアナに匹敵する強さを誇るのが、11歳になったブラン。
ディアナと同じ速さで動ける上に多彩な魔術を放つことで勝ちを得ていたのであった。
僕がブランと一緒に歩もうと告げてから、ブランは強さに貪欲となった。
曰、「アルを守るため」だとか。
未だに炎恐怖症の僕としては返す言葉がない。
そして、妹のアリアも詠唱破棄で魔術が使えるようになったとのこと。
父さんから伝え聞く話では、【八熱地獄】のイメージもきちんとできているようで、若干4歳でこのレベルなら、ゆくゆくは大魔術師になるのも夢ではないらしい。
とりあえず、【八熱地獄】の失伝にはならないようで安心した。
そして、エアヴァルト領に進出したフォティア商会の商いも順調。
現地で幅を利かせていたカイウス商会を駆逐し、中抜きと賄賂が横行していた当地の惨状を改善していた。
順調順調。
そしてついに、僕とブランが旅立つ時がやってきた。
このときのために、僕とブランは父さんたちから贈り物をもらっていた。
僕は髪の色と同じ真紅のローブに、緋色の宝石が柄に嵌め込まれた魔法剣。
父上が冒険者時代に使っていた装備を、仕立て直してくれたらしい。
ローブは『物理・魔法の両耐性』『使用者の魔術効果増幅』『状態異常無効化』『自己修復』という異常なほどの特別効果づくし。
剣も『魔導効率S』『追撃効果・極』『切断効果・極』『自己修復』の特別効果がある逸品。
さすが、元Aランク冒険者の装備だと感心するばかりだ。
しかし、あまりの高性能さに、前世の記憶がある僕としては、スタートから『◯トの鎧』『◯トの剣』を持って旅立つようなものだと感じる。
また、ブランもディアナの装備を仕立て直してもらったようで、ミスリル製の軽鎧を身に付けている。
詳しい性能は分からないが、おそらくは相当に高性能なのだろうとは予想ができる。
しかし、その鎧の特筆すべき点は、ブランの髪の色がよく映える、薄桃色で統一されていることだろう。
もとより美少女なブランが、この装備を着けると、可愛らしさが倍増している。
「似合う?」
「すごく似合うよ。可愛らしさが倍になったよ」
素直にそう褒めると、ブランの頬に紅がさす。
しかし、こんなに可愛い装備があるとは、盲点だった。
ん?ブランの装備って以前は……。
そのとき、僕は頭をわし掴みされる。
僕を見下ろすディアナは、口角がつり上がっているが、決して笑ってはいない。
「どうしたんだ、アル?」
「イエ、ナンデモアリマセン」
ミシミシと頭が軋む音を聞きながら、僕は余計なことは考えまいと誓った。
「それでは、父上、母上。行って参ります。アリア、留守番をお願いね」
「ああ、世界を見てくるがいい」
「身体には気をつけるんですよ」
「にいたん、バイバイ」
アリアはまだよく分かってないみたいだな。
僕が別れを終えると、ブランも両親との別れを終えたようだ。
相変わらず、ゲオルクがウザいくらい騒いでいたが、ブランとディアナに殴られて意識を飛ばしてしまったようだ。
これで、辺境伯領有数の戦士だっていうんだから、大丈夫かこの領地。
「アル、待たせた」
「ぜんぜん待ってないよ。お別れは済んだ?」
「うん」
「それじゃ行こうか」
そう言うと、僕とブランは【
魔力を込めていない普段は、馬とそうは変わりない風貌のため、誰もくがねが聖獣だとは思っていない。
同じく聖獣である【
こうして、ふたりと二匹の旅が始まる。
僕とブランは冒険者になるために、辺境伯領西端の街【アグニス】に向かうのだった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
頑張ったと思う。
本日二話更新。
体力は残っているか?
アイデアはあるか?
全ては私のテンション次第。
更新できるかはみなさんの応援次第です。
レビューあるいは★での評価をお願いします。
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