第56話 任務完了(にんむかんりょう)
僕たち仮面騎士が、クヌートの部屋で何やかややっている間に、戦闘員――――否、フォティア商会の従業員たちは、それぞれ屋敷内に散って奴隷の売買に関する証拠を押さえに向かう。
「イーッ、イ、イーッ!」
「「イーッ!!」」
自ら全身タイツを身にまとって先陣を切るクレス。
何をやってるのと言いたくなるが、カイウス商会を追い詰めるのに手抜かりがあってはならないと押し切られた形だ。
ニコニコと服を着替えてる姿を見ると、自分もやりたかっただけでは?と思わなくもないが、僕は大人なので黙っておく。
前世で言えば、遅い中二病といった感じか。
まぁ、ヒーローものはいくつになっても燃えるから仕方のないことだ。
戦闘員―――否、フォティア……もう、めんどくさいので戦闘員でいいや。
戦闘員たちは、あの叫び声にも法則性を持たせて意思の疎通ができるようにしているらしい。
なにかの折に、僕がモールス信号の話をしたことを覚えていたようで、それを自分たちでアレンジしたようだ。
ものすごく、才能の無駄遣いをしている気がする。
だけど、戦闘員たちの生き生きとしている姿を見ると、辞めろとは言えない。
クレスは他の戦闘員に指示を出すと、残った数名とともに地下室へと向かう。
事前に入手していた情報から、そこに奴隷たちが押し込まれている可能性が高かったからだ。
「何だこの黒尽くめは?」
「どこから来やがった?」
「まぁいい、捕えて拷問すれば良いことだ」
地下に続く階段の前には、護衛たちが集まっていた。
一見して高ランクの冒険者と分かる出で立ちだ。
「残念だったな。俺たちが……」
その中でもリーダーと思われる者が、腕を組んで得意気に何かを言おうとしていた。
「重力の楔を【
「うぎゃあ!」
「げはっ!」
「ぐえっ!」
だが、戦闘員たちはそんな戯言はガン無視で、魔術を放つ。
ひとりの戦闘員の魔術が、大半の冒険者たちを押しつぶして身動きを取れなくする。
かろうじて魔術を逃れたリーダーや数名の冒険者たちは、慌てて剣を手にするが遅い。
「雷の裁きを【
別な戦闘員の魔術で、残りの連中は尽く感電する。
こうして、クレスたちは手練の護衛たちとの戦闘をアッサリと終わらせたのであった。
クレスたちが地下に降りると、そこには大勢の貴族や商人たちが集まり、奴隷の売買を行っていた。
衝撃的な光景に、思わず動きが止まる戦闘員たち。
突然現れた、珍妙な格好の乱入者に地下にいた者たちは騒然となる。
「イッイーッイーッ!」
クレスの指示で我に返った戦闘員が魔術を唱える。
「安らなかる眠りを【
その魔術は、会場にいた全ての者に眠りを誘う。
反抗する者がいなくなった会場で、戦闘員たちは奴隷たちが囚われている部屋に向かう。
何も無い粗末な部屋にいたのは、粗末な貫頭衣に身を包んだ老若男女。
年齢も種族もバラバラな者たちが10人ほど。
「知恵の果実を喰らわん【
クレスがそうつぶやくと、ひとりずつ確認していく。
「そこのジジイは殺人鬼だ。で、こっちの女は詐欺師。それ以外を助けるぞ」
「「「イーッ!イーッ!」」」
クレスの鑑定は、物の良し悪しの他にも、人の過去をも暴くことができる。
それによって、
「「「イーッ!イーッ!イーーーーーッ!」」」
クレスに続いて、他の戦闘員たちが勝利の雄叫びを上げる。
これにて奴隷市の壊滅は完了。
この結果により、カイウス商会への大打撃は確実。
会場にいた貴族や商人たちもただでは済まないだろう。
上々の結果に頬が緩む。
僕たちと合流したクレスたちは、僕の【
助けた奴隷たちは、フォティア商会で責任を持って家に送り届けることになる。
そして、身寄りがない者は、商会が面倒を見ることで話がついていた。
こうして僕たちの、カイウス商会への嫌がらせは終了したのであった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
モチベーションに繋がりますので、★での評価をお願いします。
評価が高まれば、更新も早くなる…………かも?
拙作
無自覚英雄記〜知らずに教えを受けていた師匠らは興国の英雄たちでした〜
自己評価の低い最強
もよろしくお願いします。
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