第53話 権謀術数(けんぼうじゅっすう)
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『無自覚英雄記〜知らずに教えを受けていた師匠らは興国の英雄たちでした〜』
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『自己評価の低い最強』
も、よろしくおねがいします。
モチベーションに繋がるので、★の評価もいただけたらうれしいなと。
やる気が出れば早期更新もあるかも。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
王都のとある屋敷。
そこに集まっていたのは【カイウス商会】の関係者とその協力者たち。
普段は醜悪な笑みを浮かべて、儲け話に花を咲かせている面々が、この日ばかりは様子が違った。
「いったいどういうことだ!?領都フレイムのスラムが潰されたとは!?あそこは
てっぺんが薄くなった赤い髪を振り乱し、大声で怒鳴り散らしている男が、先代シュレーダー辺境伯【ニクラス】であった。
怒るたびに、樽のような腹がテーブルに当たり非常に暑苦しい。
そして、その憤怒を一身に受けているのが、カイウス商会の商会長である【クヌート・フォン・カイウス】
枯れ木のような潤いのない。痩せ細った身体が特徴的だ。
その切れ長の鋭い目が、冷淡にニクラスを見つめている。
「それは想定外ですが、仕入れ先などどこにでもあります。いちいち騒ぐほどではありません」
「それでは、辺境伯領はどうするのだ!?アイツらにぬくぬくと過ごさせる気か!?」
元高位貴族の怒声にも怯むことなく対応するその姿は、さすが一代で商会を国内随一に導き、【子爵】位まで賜った伝説の商人と言われるほど。
「他にも手はあります。我々も少なからぬ痛手を負っていますので、決してこのままでは済ませませぬ」
「ならば、さっさとやれ!」
顔にニクラスの唾が飛んでも表情を変えない【商人王】であったが、その内心ではひとつの案を検討していた。
(辺境伯領への取っ掛かりとして手を組んだが、もはやここまでか。これまでのような、ちまちまとした干渉では、フォティアの小僧に危機感すら抱かせられぬ。ならばいっそのこと……)
そんなことを考えていると、突然、庭の一部が爆発し、何者かが屋敷内に雪崩込んで来た。
「イーッ!イーッ!イーッ!」
「イーッ!イーッ!イーッ!」
「イーッ!イーッ!イーッ!」
「イーッ!イーッ!イーッ!」
それは、奇妙な叫びを上げる全身黒尽くめの闖入者であった。
「なななな……、何だあれは!?」
ニクラスが腰を抜かしているが、クヌートは冷静に現状を把握していた。
(敵襲か!?だが、何故にここまで派手に侵入してくる……?本来なら隠れてやって来る方が、暗殺には適しているはず。いったい何の目的があるというのだ……)
そして、クヌートはその明晰な頭脳で、これから起こるであろうことを予想する。
(派手な騒ぎを起こすことは、官憲の介入を招く……。まさか、シュレーダーのスラムのときと同じか!?)
その可能性に思い至ったクヌートは、慌てて指示を出す。
「主力は地下だ!地下に精鋭を向かわせろ!」
この屋敷の地下には、多くの違法奴隷が捕らえられており、
これまでは、子爵家の屋敷ということで一種の治外法権を有していたが、この騒ぎで官憲の介入があれば、違法奴隷を禁じているこの国では即座に首が飛びかねない悪行。
「おおっ、素晴らしい!さすがに判断が早い」
だが、そこにまだ幼さの残る声が響き渡る。
「何者だ!!」
クヌートが、それまでの冷静さが嘘のように怒鳴りつける。
現状の危険性を認識しているからこその態度だった。
もはや悠長なことは言っていられない。
すると、庭に面した屋敷の壁が、音もなく一瞬にして消え失せる。
「なっ!?」
「何だとおおおおおおおおおお!?」
思わず驚きの声を漏らすクヌートと、目の前の光景が信じられずに大騒ぎするニクラス。
その視線の先には、【
ひとりは真っ赤な軽鎧を身に纏い、もうひとりは真っ白な軽鎧姿。
「…………【
そうつぶやくクヌート。
その言葉に赤い仮面の者が反応する。
「おおっ、御名答」
拍手をする赤い仮面。
遅れて白い仮面の者も慌てて拍手をする。
「改めて……。
その言葉に合わせるかのように、庭では再び大轟音が響き渡るのであった。
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