第45話 情報収集(じょうほうしゅうしゅう)
こうして、少年たちを風呂に入れ終えた僕は今、少年たちの隠れ家の拡張を行っている。
もともと彼らは崩れた家屋の地下室に勝手に住み着いていた訳だが、もう風呂も作っちゃったんだし、変に自重することもない。
それに、何だか秘密基地を作るようでワクワクする。
男って生き物は、いつまで経っても少年の気持ちを忘れないのだよ。
お前は少年だろうというツッコミは受け付けない。
まずはもう一つ部屋を作る。
みんなから話を聞くのに、広い部屋は必要だしな。
後は男女別々の寝室も作ってやろうか。
地下室の壁がくり抜かれて部屋ができるたびに少年たちから歓声が上がる。
いいぞ、いいぞ。
気分は箱庭系ゲームをやっている感じ。
それこそ、『マ◯ンクラフト』だとか『ど◯ぶつの森』だとか。
だんだんテンションが高くなり、次々と地下の改装をしていると、いきなり後頭部を叩かれる。
スパーンと心地良い音が響き渡る。
「やりすぎ」
驚いて振り返った僕は、呆れた表情のブランと目が合う。
あれ?
そうして周囲を見回すと……何ということでしょう。
単なる穴蔵だった地下室が、風呂トイレ、男女別の寝室、会議室まで完備の秘密基地に変わっていました。
うん、こりゃあ確かにやりすぎた。
少年たちは、あまりのことに呆けてしまっている。
一部の少年は、神の奇跡だとまた膝をついて祈っている有様だ。
「アルは、一度のめり込むとこうなる」
「ゴメン」
「とりあえず、あっちはきちんと乾かしといたから」
「ホントに?ありがとう」
「ん」
どうやらウチの幼馴染みは、僕が地下の魔改造している間に、キチンと少年たちの面倒を見てくれていたらしい。
素直に感謝の言葉をかけると、赤くなってそっぽを向くのが可愛らしい。
「よし、とりあえずこんなところで。じゃあ、スラムについて聞かせてもらおうか」
僕がそう告げると、少年たちは背筋を伸ばして元気に返事をするのであった。
会議室には中央に大きな丸テーブルを作り、その周りに人数分の椅子を作っておいた。
もちろん、土を固めただけのものなので、色が味気ないのは許してほしい。
また、部屋を拡張するときに、外から灯りが取れるように小さな窓を作ったり、空気が抜ける穴も設けているので、ここで生活していく分には問題ないはずだ。
「お兄ちゃん、何なのこの人たち……」
「きっと神様がお遣わしになられた方々だ」
「ああっ、あんなに世の中を恨んでいたお兄ちゃんが……」
何やらごちゃごちゃとした会話をしている兄妹は放っておく。
他の少年たちも、あまりの衝撃や風呂に入る際の大騒ぎで、貴族がどうたらといったことを忘れてしまったようだ。
何となくだが、打ち解けたような気がする。
まあ、そんなこんなで、すっかり大人しくなってしまった少年たちからスラムについて聞いたわけだが、その内情は思ったよりも酷いことになっていた。
それと言うのも、現在のスラムは数年前から抗争状態にあり、血で血を洗う戦いが昼夜を分かたず発生しているらしい。
争っているのは、旧来からスラムを牛耳っていたとある獣人の一派と、ここ数年の間に他の領地からやってきた者たちの一派のようだ。
クレスたちは古くからいる獣人の一派の保護下にあるようで、教会から追い出された彼らが辛うじて生き延びられているのはそのおかげのようだ。
それに対して、先に僕たちに因縁をつけてきた奴らは他の領地から来た一派らしい。
獣人の一派は粗暴ではあるが、弱者を保護しては何らかの手段で職を見つけて送り出してくれているらしい。
何だそれ、どっかの職業安定所か?
しかし、他の領地から来た一派の方は、強盗・強姦・誘拐・殺人と何でもするような人間が集まって徒党を組んでいるようだとのこと。
スラムが最近治安が悪い理由は、コイツらのせいだと少年たちは力説する。
とりあえずは、一方からだけの意見なので全てを鵜呑みにすることは出来ないが、詳しく調べる必要があると思うのだった。
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