第24話 陰謀詭計(いんぼうきけい)

 廃坑までの道のりは、足元にさえ気をつければそう問題になることは無かった。


 以前は採掘したミスリルを運び出していたのだから、道幅はそれなりにあるし、大きな障害物も無かった。


「もう少しで廃坑だ」


 廃坑近くの開けた広場に差し掛かるとエドガー先生はそう説明する。

 昔はミスリルを運ぶための荷車の待機場所であったのだろうか、前世で言えば高速道路の小さなパーキングエリア程度の広さがあった。


 ちょっと休憩しようと、足を止めた僕ら。

 そこで僕はずっと気になっていたことを尋ねる。


「先生、聞いてもいいですか?」

「んあ?どうした?」

「ええ、いくつか気になったことがあったものですから」


 そう切り出した僕に、エドガー先生はあっさりと許可を出す。


「先生、今日は飲みに行っていたと聞いたのてすが全然酒の臭いがしないんですが?」


 こちとら、前世の消防署員時代には嫌というほど酔っ払ってケガした者を救護してるんだから、少しでも酒を飲んでいればすぐに分かるんだが、先生からは一切そんな臭いがしなかった。


「そんなことも分かるのか?まぁ、いいや。ああ、確かに飲みに出たんだが、店にお気に入りのお姉チャンがいなかったんで帰ってきたんだ」

「先生って、その程度でお酒を飲まずにいれたんでしたっけ?」


 ひとりでも深酒してる姿は度々見ているので、僕は素直に問いかける。


「たまにはそんなこともあるさ。お陰でこんなところまで来れたんだから、良しとしようぜ」 「そうですね」

   

 僕はあっさりと引き下がる。


「それじゃ、さっき先生は『あんな格好じゃ』って仰ってたんですが、どんな格好です?記憶が確かならブランもプレセア先生も、僕がエドガー先生に剣術を習っているときに外出してるんで、なんですが?」

「ああん?それは……だな」


 エドガー先生が言いよどむ。

 そこへ僕は追い込みをかける。


「先生、左袖に


 一瞬、先生が固まる。

 ちょっとしたカマかけだったんだが、それで十分だった。


 その直後、横薙ぎの剣が僕に迫る。


 予め予想していた僕は、エドガー先生……いや、エドガーの剣を後ろに下がって避ける。

 

「チッ、面倒くせえガキだ。これだから変に大人びた貴族子弟は嫌なんだよ」


 そこにいたのは、口を三日月のように開いて嘲笑している裏切り者であった。




★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



阿爺下頷(あやかがん)――物事を見分けることができない愚かな人のたとえ。

背信棄義(はいしんいぎ)――信用と同義を守らないことのたとえ。


 実は、数話前からなんとなく裏切りを臭わせていたりはしました。




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うりぼう

 ヘ ︵フ

( ・ω・)

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