第63話 悪童の身震
「トリスタン!俺の名を言ってみろ!!」
そう叫ぶアルの背中を眺めるオレは、明らかに激怒している姿に震えが止まらない。
普段は、どんなに失礼な態度を取られても、どんなに蔑ろにされても絶対に怒ることがないアルだ。
むしろ、相手の不躾な言い分にそのとおりだと納得してしまうような男だ。
そんな自己評価が激低なアルだが、こと他人がぞんざいに扱われたり、尊厳を犯されたりしたときだけは人格が変わったと錯覚するくらい激怒する。
多少戦い方を学び、精神的にも強くなった今だからこそ、それが何かを理解することが出来てかろうじて耐えられるようになったが、常人ならばその怒りが及ぼす
それは真っ正面からアルの怒
「いっ!!ひっ!!ひえ、ひえ~~!!なななな…………何を言っている?おおお、お前は誰だ!?」
あ~っ、これやっちまったなぁ……。
義兄が
しかも、アルの
【
聖者様……いや、もう偽聖者って言ってもいいよな。
アルがポキポキと指を鳴らしながら、ゆっくりと偽聖者に近づいていく。
アレって怖えんだよな…………。
偽聖者がジリジリと後退りしながら、助けを求めて大声をあげる。
「くくっ、おのれらなにをしておる!かかれ!かからぬか~~~っ!! 」
すると、その声を聞いて次々と部屋に上半身を狼の姿に変えた
「殺れ!殺れ!ぶっ殺せええええええ!」
助けが来て気が大きくなった偽聖者が、アルを指差してわめき散らす。
だが、いくら
「邪魔だ!」
アルが軽く拳を振り抜けば、殴られた顔がザクロのように破裂する。
軽やかに蹴りを見舞えば、
まさに鎧袖一触。
アルの身体に
「あわわわわわわわわわわわ……」
ついさっきまでの強気な態度が嘘のように、偽聖者は這々の体で部屋の入口まで向かっていく。
自分だけは助かろうと逃げるつもりだ。
だけどアルバートからは逃げられない。
部屋の入口付近にいた
「ぐぴゃっ!」
カエルでも踏み潰したような悲鳴を上げて偽聖者は床に張り付く。
そしてそれを見下ろすアルは、一切の慈悲なく告げる。
「早く死に場所を選べ!!きさまは死ぬべき男だ!!」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
怒らせちゃダメな人を怒らせるとこうなるという典型でした。
次回は偽聖者の視点からどうしてこうなったかの説明となります。
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