第41話 補佐の哀哭
「どうして……どうして!あのとき、旦那さまを診ていただけなかったのですか!!」
私は、先ほどまで多くの者に奇跡の治療を行っていた青碧の髪の青年にすがりついて、旦那さまを見捨てたことを詰るのでした。
★★
私は主である【ブンザ・キノクニヤ】さまにお仕えする、一介の商人です。
私の仕事は旦那さまをの補佐。
これまでに旦那さまと、数多の国々を共に旅し、幾多の時間を共に過ごして参りました。
大きな商談がまとまれば共に歓喜し、小さな
もはや、私自身は旦那さまの右腕であると自負しています。
そんな旦那さまから、ウルサ・マヨル帝国の僻地にある【奇跡の村】に向かうと告げられたとき、私は旦那さまの御身体がだいぶ悪いのだと察しました。
旦那さまは過去に医者に毒殺されかけたことがあり、医者というものを一切信じていない。
そのため、どこか具合が悪くともポーションで誤魔化してきたのですが、わざわざ眉唾ものの奇跡にすがろうと言い出したことから見れば、かなり体調が悪いとの自覚があるのでしょう。
実際に、下働きの者からは旦那さまが隠れて吐血していたとも聞いています。
旦那さまは口さがない者たちからは『金の亡者』と呼ばれていますが、その実は得た金の一部を身寄りのない者たちへの援助に回していたり、行くあてのない者たちを積極的に雇用する場を設けたりと、篤志家でもあるのです。
それなのに……。
「どうして、旦那さまを診てくれなかったのですか!明らかに具合が悪いのは分かったはず!」
「おい、オッサン。何を言ってやがる。アンタも阿野状況で誰かひとりでも特別扱いしたら収集がつかなくなるのは分かってたろ?」
「それでも、それでも……」
「どんなに具合が悪くても、並んだ順番を優先してたんだ。みんな、手遅れになるかも知れないって不安は抱えていたんだよ」
「そんなことは分かっているッ!でも……」
「だいたいよお、いつ死んだのか分からねえけどよ、あの後にちゃんと最後尾に並んでいたら、助かったんじゃねえのか?」
「うぐっ……」
まさにど正論。
私を睨みつけながら、そう語る金髪の小僧の言葉に、私は思わず言葉が詰まってしまいます。
自分がいかに無理難題を言っているのかは、よく理解しています。
それでも私は、旦那さまに生きていて欲しかったのです。
私が涙ながらにそう訴えると、生意気な小僧は大きくため息をつく。
「はぁぁぁぁぁ。どうしようもねえなぁ」
そうこぼした小僧が、旦那さまの骸を指差すと、青髪の青年に指示をする。
「ホントに仕方ねえ。アルバートさん、やっておしまいなさい」
「お前はどこのご隠居だよ……」
そんな軽口を叩きながら、旦那さまの身体に手を当てる青年。
すると、その手が光を放ったかと思うと、旦那さまが目を開く。
「うええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」
私の悲鳴混じりの声が、宿屋に響き渡るのでした。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
明けましておめでとうございます。
本年もアルバートの冒険をよろしくお願いします。
まだ10万文字に至ってはいませんが、本作品でもカクヨムコンにエントリーしています。
皆様の応援をお願いします。
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