第22話 愚者の決意

 どうやら部屋の周りを連中に取り囲まれてしまったようだ。


 こうなっては仕方ない。

 僕は腹をくくる。


「みんな僕の方に!早く!」


 僕は囚われていた女性たちに声をかけると、近くに集まってもらう。

 ある程度まで近寄ってもらった僕は、無詠唱で彼女たちの周囲に結界を張る。


「これ……は」

「なに、この光」

「すごい……」


 彼女たちは突然、目の前に現れた光の膜に驚きを隠せない。

 そこで僕は彼女たちに説明をする、


「この結界は、たいていの攻撃なら防いでくれるよ。だから、絶対にそこから外に出ないでね」


 僕がそう早口でまくしたてると、彼女たちは恐る恐る頷く。

 これでよし。


 そして僕は、メガネ姿の女性を見つめると声をかける。


「みんなの面倒見をお願いしてもいいですか?」

「はっ……はい。分かりました」


 僕の真剣な表情で、それが決して冗談ではないと判断してくれたのか、メガネの女性は力強く頷いた。


「もういいかぁ〜?せっかく待ってやったんだ。せいぜい楽しませろよ」


 僕よりも頭ふたつ分は背の高い首領が、ニヤニヤと意地の悪い笑顔を浮かべている。

 どうやらわざわざ待っていてくれたようだ。


 準備は終わった。

 こうなったら、全力でやってやる!



 こうして、僕と路地裏の男たちとの戦いが始まったのだった。


 僕は結界を張るのは得意な方だ。


 昔から結界に逃げて、いろんなことをやり過ごしてきただけあって、その強度には自信がある。

 そのため、何かあっても彼女たちがそう簡単に害されることはないだろう。


 だが、世の中は広い。


 僕の義兄弟たちのように、結界をものともしない者が、他にいないと言いきれるだろうか。


 長兄のように、剣の一振りで結界を破る者が。

 次兄のように、結界を中和し無力化する者が。

 末弟のように、魔術攻撃で結界を無くす者が。


 少なくとも僕の身近な人だけでも、100パーセントだ。


 僕の義兄弟たちが異常だと考えたいが、これに関しては実験したわけではないので、何とも言い難い。


 となれば、今の僕に出来ることはただひとつ。


 そんな者が結界に何かする前に、敵の勢いを削いで近づけないようにすることだ。



 僕はもはや相棒と言っても過言ではない鉄の剣なまくらを鞘から引き抜くと、身近にいる敵に振り下ろす。



 まずは、連中を彼女たちのいる結界から引き離さなければ。


 そう考えた僕は、ただひたすら剣を振る。


 素早く移動しては、剣を横薙ぎにして敵を牽制し、時には驚かせるためにわざと剣を大振りして見せる。


 そんな時間がどれほど過ぎたことであろうか。


「…………あれ?」


 気づくと僕の目の前には、無数の躯が転がっていた。

 その全てが敵だ。


 えっ……?


 周囲を振り返るも、もう敵に生存者はいなかった。


「イテッ」


 僕の靴の爪先が何かにぶつかったので見てみれば、そこには両断された首領の姿が。


 あれっ?

 誰にやられたんだ?

 

 ………………やっばり僕か? 


 どうやら、勢い余っていつの間にか首領もろとも敵のすべてを切り捨ててしまったようだ。


 牽制してたはずなんだけど……。


 どうしてこうなった……。


 僕は予想外の出来事に、思わず天を仰ぐのであった。


★★★★★★★★★★★★★★


モチベーションにつながりますので、レビューあるいは★での評価をお願いします。


明日再び、投稿4作品一挙更新をやってみたいと思います。


ちゃんと出来るのか?

ネタは大丈夫なのか?


知力と体力の限界に挑みたいと思います。


ご期待下さい。

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