第21話 愚者の解呪

 僕は突然のことに驚いているエギルの妹が落ち着くまで、そっとしておくことにする。

 なんだろう、別に難しいことは、何ひとつしてないはずなんだけど。


 その間に、他の人たちの【隷属の首輪】を外しておこうか。


「えっ……嘘……」


 嘘じゃないよ。 


「こんなことって……」


 大したことじゃない。


「ありがとう、ありがとう、ありがとう」


 そこまで感謝されるとちょっと恥ずかしいな。


 さしたる手間もかからずに、僕は部屋にいた女性たちの首輪を外していく。 

 首輪を外したくらいで、みんな泣きそうな顔になるのは何でだろうか。


 よし、これで終わりだね。


「あっ、ありがとうございます」


 最後に、メガネをかけている女性の首輪を外すと、僕はふうっと息をつく。


「さてと……」


 僕が周囲を見回すと、首輪を外したみんなは、肩を寄せ合って涙を流している。

 エギルの妹も、首元を触りながらキョロキョロと周囲を見回している。

 どうやら、落ち着いたようだね。


 そこで僕は、部屋にいるみんなに、これからのことについて尋ねる。


「…………これから、どうしよう?」

「「「……………………はっ?」」」


 部屋のみんなが声を揃えて驚きの声を上げる。

 だって、こんなにいるとは思わなかったし、逃げるにしてもどこに行けばいいのか……。


「あっ、あの……戦う、ということは?」

「誰が?」

「…………えっ?」


 メガネ姿の女性が、恐る恐る戦うべきではないかとの提案をするが、誰が戦うの?

 僕は、そこまで強くはないよ。

 

 長兄なら、剣一本でなんとかするだろうし、末弟なら魔術で一発だろう。

 

 僕にはそこまで圧倒的な力はないのだから、まず戦うという可能性はハナからない。


 じゃあ、どこに行けば良いのかいいアイデアはないものかと尋ねたのだが……。

 どうしたものか……。


 そんなことを思っていると、突然、騒々しい音とともに、部屋のドアが大きく開け放たれる。



「おうおうおうおう、何だこりゃあ!売り物が自由になってるじゃねえか」


 そこにいたのは、取り巻きたちを引き連れた首領であった。

 

「どういうことだ?おい、アイツは殺したんじゃなかったか?」

「はっ、はい。間違いなくあの犬のもとに……ギャアァァァァァァァ!」


 言い訳をしようとした男が、首領の大剣で真っ二つに両断される。

 あれは僕をずっと見張っていて、後ろから刺してきた男だな。


 あいつに一回殺された僕としては溜飲の下がる思いだが、そんなことよりもこの現状を何とかしなければ。

 

 僕は必死に、この状況を打開するための考えを巡らせる。

 すると、背後からポツリと声が聞こえてくる。


「ああ、なんて運がない……」


 そんなことをつぶやくメガネの女性。


 はいはい、そうですね。

 わざわざ、ハッキリと言わなくても分かってるよ。


 僕は彼女に指摘されたとおり、自分の運のなさを心から嘆くのであった。



★★★★★★★★★★★★★★★


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一斉に更新したら、


『幸福の王子と竜の姫〜転生したら領民がヒャッハーしてました〜』


『自己評価の低い最強』


の2作品の反響があったので、とりあえずしばらくはこの2作品を交互に更新していけたらと思います。


あっ、もちろん『無自覚〜』は毎日更新頑張りますよ。

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