第19話 愚者の探索

 仮死状態から蘇生した僕は【探知クアエレ】の魔術で、監視者の目が無くなったのを確認すると、そろそろと犬小屋を出ていく。


 幸いにも犬はまだ寝ているし、僕の装備もそのままだ。

 ナマクラとは言え、ここまで長い間旅を共にした相棒だから、腰に剣があるのはすごく心強い。


 金にもならないと思って、そのままにしやがったなとも思わなくもないが、結果的には手元に残ったのだから良しとしよう。


「おっ、あるある」


 自由に動けるとなれば、あとは簡単だ。

 地面に残された足跡のうち、一番深く印象されている足跡を辿ればいい。


 僕が貫かれたときに、ニヤニヤと嘲笑っていたデカい椅子に腰掛けた大男。

 アイツの足跡を辿ればいいだけだ。

 仮に足跡を見間違えても、一番深く印象されるほどの重装備ともなれば、大事な場所の守り人と相場は決まっている。

 どちらに転んでも、重要な場所には辿り着けるはずだ。


 そうして僕は、とある廃屋に辿り着いた。

 

 案の定、ガラの悪い見張りもいるし、【探知クアエレ】でも中に多くの人がひとつの部屋に押し込まれているのを確認できた。


 どうやらここで間違いないようだ。


 はいはい、ちょっと失礼させてもらうよ。


 僕は、見張りの男を剣の腹で叩いて昏倒させると、堂々と廃屋に入る。

 う〜ん、先客でもいたかな?

 中の見張りは、全員首を切られて絶命してた。


 まぁ、殺気は感じないのでこのまま進んでも問題はないだろう。

 もう、部屋の人たちしか生存者はいないと分かっていたので、僕は何も気にせずに進んでいく。

 時折、見張りの死体が無造作に転がっていてドキッとするけど、問題があるのはそれくらい。


 ようやく地下室の一角に辿り着いた。

 そっと、ある部屋のドアを開けると、そこには人種や年齢を問わず、女性だけが十数人ほど集められていたです。

 首には【隷属の首輪】を着けている。

 これは、迷宮ダンジョンから発掘される迷宮遺物アーティファクトと呼ばれる魔道具の一つで、装着者の自由意思を失わせて言うことを聞かせるという胸クソ悪い代物だ。

 その取り外しは、首輪の主登録をしている者のみが可能で、無理に取り外そうとすれば脳が焼き切れるほどの痛みが走り、装着者は死に至るとされている。


「そうか、だから逃げられなかったんだね」


 部屋にいた人々は、僕の姿を見て一様に身を固くする。

 そりゃあそうだ。

 急に変な男が部屋に入ってきたんだから……。


「えっ、えっと……すいません、別に何もしません。皆さんを助けに来ました。あっ、それとここに【エギル】の妹さんっていますか?」


 人前で話すことに慣れていない僕は、思わず早口になってしまう。

 そうだよね、急に助けに来たって言ってもひとりだけだし、信用もできないよね。


 しばしの間、部屋の女性たちと、僕の間に沈黙が流れる。

 すると、ひとりの少女がおずおずと手を挙げる。


「あっ、あの……わたし……です」

「はい?」

「わたしがエギルの妹です」   


 おおっ、やったぞ!

 僕は当座の目標を果たせたことに喜びを覚える。


 お兄ちゃんと同じ綺麗な瞳の色だ。

 間違いないね。


 僕はその少女に駆け寄ると、さっさと【隷属の首輪】を取り外してあげる。


「えっ?なんで……首輪は……?」


 少女は僕が首輪を外したことを驚いているようだけど、こんなガバガバの魔法陣なんてあっという間に破壊できるよ。


「どこか痛みはないかい?ああ、肺の病気かな?一緒に治しとくね」

「えっ、えっ、えっ?」


 僕は粗末な貫頭衣姿の少女にそう尋ねると、念のため【完全治癒(ペルフェクティオ・サナーレ)】を無詠唱で展開する。

 ちょうど、両胸のあたりに嫌な気配を感じたので、これがエギルの言っていた妹さんの病だろう。

 ついでに治しておこう。


 よし、問題なく終わったね。

 まだ、驚いていて現実を受け入れられないようだね。

 いろいろあって、理解が及ばないみたいだ。

 それは仕方ないね。


 じゃあ、僕はその間に他の人たちの首輪を外そうか。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


愚者のターンだと、なんてスラスラと書けるんだろうか。

とりあえず書けたので投稿しますね。


毎日投稿の『無自覚~』はともかく、その他の投稿はヤル気の問題ですので、その気にさせるためにも★やレビューでの評価をお願いします。


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