第18話 小妹の不満
わたしの名前はエイルです。
ふたつ年上のエギルの妹です。
生まれたときから身体が弱く、お父さんやお母さんがいたころから周りには迷惑をかけていました。
孤児院にいても、ずっと寝ていたばかりの私はお手伝いもできず、みんなからは「お荷物」と呼ばれてきました。
そんなわたしですが、お兄ちゃんだけは決して見放すことはせずに、いつも世話してくれていました。
わたしはお兄ちゃんの優しさに甘えながらも、もっとやりたいことがあるだろうにと悲しくも思っていました。
ある時、わたしは院長先生に手を引かれてどこかに連れていかれました。
そこは、町の外れにある大きなお屋敷。
中にいたのは綺麗な服を着た男の人たち。
「おおっ、まさに【
「【カール・ツー・トランシトゥス=シュヴァルツシルト】の血脈よ」
「それでは…」
「ううむ、我らの念願も果たせようというものぞ」
わたしには、何を言っているのか分かりませんでしたが、男の人たちの笑顔がすごく気持ち悪かったです。
その後、どうやってそのお屋敷から逃げ出せたのかは覚えていませんが、わたしにケガひとつなかったのにお兄ちゃんは血まみれでした。
また、お兄ちゃんに迷惑をかけてしまった。
そう私が泣くと、お兄ちゃんは私の頭をやさしく撫でてくれました。
「お前は俺の大事な妹だ。助けるのは当然だぞ」
そんな言葉に私はありがとうと伝えるだけでした。
私たちは孤児院から逃げ出すと、【トランシトゥス】の街にある路地裏と呼ばれる場所で生活を始めました。
そこには、私たちのような身寄りのない子供や、外で悪いことをして追いかけられているような人がたくさんいました。
「いいか、ここのやつらは絶対に信じるなよ」
そう言ってお兄ちゃんは、私のために人が嫌がることも、人の害になることも率先してするようになったのです。
「絶対に守ってやるからな」
わたしをそうやって力づけるお兄ちゃんはどこか寂しそうでした。
そんなある日、お兄ちゃんは見たこともないような大金と、たくさんの食べ物を持って帰って来ました。
「これは、どうしたの?お兄ちゃん?」
あまりにも現実離れしたことに、わたしはお兄ちゃんが人を傷つけたり、殺めたりしてお金を稼いだのではないかと思いました。
ところが、お兄ちゃんはそれを否定して、今日あった出来事を楽しそうに話してくれました。
【アルバート】という人と知り合いになって、そのガイドをしてもらったお金だと。
そのアルバートさんが、いかに常識外れかと。
それがすごく楽しそうで、いつしかわたしもつられて楽しくなっていました。
「アイツ、放っておけないんだよ」
ああ、お兄ちゃんはアルバートさんと一緒に旅をしたいんだなって、ちょっと羨ましく思ったのは秘密です。
でも、こんなにニコニコ話してくれるお兄ちゃんは久しぶり。
わたしはこんな日がずっと続いてくれればいいのにと神様にお祈りしたものでした。
まさか、その当日に平和な日々が終わるとは思ってもみずに…………。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
いやぁ、被害者サイドはなかなか難産でした。
これからは主人公のターンになる予定です。
なるべく早く次の話をお届けしたいと思います。
リアルが忙しいので、とって出しで投稿していきます。
毎日投稿の『無自覚~』はともかく、その他の投稿はヤル気の問題ですので、★やレビューでの評価をお願いします。
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