第12話 首領の哄笑

 コメントをいただいて、テンションが上がったので書いてみました。

 

 主人公は出てきません。


 またテンションが上がれば書きます。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 俺の名は【ガドル】


 この腕っぷしと、強力な後ろ盾のおかげで、【路地裏クソ溜まり】の支配者へと上り詰めた男だ。


 行くあてのない弱者カスたちや、脛に傷を持つ悪人クズたちが、人目につかない場所に集まるのは世の常。

 やがてそこは、国の法律が届かない無法地帯となる。


 俺のいる場所もまたそんなところだ。


 家を失ったガキどもから上納金をせしめ、官憲から逃げてきたゴロツキを部下にする。

 時には、反抗をされることもあるが、そんなときには、この俺の【剣士の末アルニラム】正統伝承者の剣が唸りを上げるってワケだ。


 しかも、俺の背後にはあの【覇王】様が付いていると知れば、大抵の者は平伏すって寸法よ。



 

 そんなある日、俺のもとにひとりの男が現れる。

 そいつは、脂ぎった顔に薄い髪、ハムかと見まごうばかりに肥大した身体を持つ男だった。

 【コルディス】と名乗るその男は、醜悪な笑顔で俺にひとつの提案をよこす。


 聞けば、この【路地裏クソ溜まり】に貴族の子女が紛れ込んでいるらしい。


 かつて、この街やその周辺一帯を治めていた領地貴族【カール・ツー・トランシトゥス=シュヴァルツシルト】の遺児が。


 詳しくは分からないが、確か、当主の死後に酷いお家騒動があって、現在この地は帝国の直轄地となっているはず。


 そこで、遺児を連れて帝国に訴え出れば、この地を任される公算が高いとか……。

 

 そんな話が上手くいくはずがないだろうと、早々に話を切り上げようとした俺に、その男は慌ててその根拠を挙げる。


 【シュヴァルツシルト】に連なる者には、その身体にひとつの特徴が現れるとか。


 それが【奇蹟の瞳アースアイ】と呼ばれる特殊な瞳の色らしい。

 どうやら、瞳の虹彩と呼ばれる部分の色が単色ではなく、複数の色がマーブル状になっているとのこと。


 俺はそんなヤツいるはずがないだろうと、否定しようとしたが、何かが引っかかる。


 そういえば、数ヶ月前に【路地裏クソ溜まり】にやって来た10歳そこそこの小僧ガキの瞳が、瞳孔の周囲に花が咲いたかのように複数の色が重なり合っていたのを思い出す。


 世の中には、奇妙なものを欲しがる異常者へんたいがいて、過去には虹彩が真っ赤な瞳を持つ子供を攫って、その瞳をくり抜いて売り捌いたこともあったので、いずれは、このガキの瞳も金になるんじゃないかと考えたことがあった。


「確か……【エギル】」


 そうつぶやくと、目の前の豚が歓喜の雄叫びを上げる。


 どうやら、お目当ての遺児は目と鼻の先にいたようだ。


 俺がこの【路地裏クソ溜まり】に君臨して早数年、ついに運命の女神フォルトゥナが微笑んだのを確信した俺は、思わず舌なめずりをするのだった。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


瞳をくり抜かれたなんて、ちょっと鬱気味になってしまったので、明日午前11時の投稿で即解消します。


鬱展開は嫌いです!。

 

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