6-2
なんとも不思議なことを言われてしまいましたが、私でお役に立てるのであれば出来ることはいたす所存ではございます。
とはいえ、私にできることなどほとんどございませんので、あまりすることはないと思いますわ。
「銀のお嬢様は冒険者の中では人気者だからな」
「はい?」
ほとんど外に出ないのに人気者というのは、身内のひいき目でございますね。
マリオンお兄様は私にその人気を利用して、冒険者がまとまるように誘導してほしいとおっしゃっているのですわ。
サーヴならともかく、私のような物にそのようなたいそうなことが出来るとは思えませんので、丁重にお断りいたしましたら、マリオンお兄様はにっこりとほほ笑まれてそれでいいとおっしゃいました。
一体どういうことなのでございましょうね?
マリオンお兄様はそのままお帰りになられてしまいましたが、サーヴとロルフは何か納得しているようで、マリオンお兄様と最後に何かお話しをなさっていました。
私の預かり知らないところで何かが動いているのでしょうか?
革命の前の時の妙な緊張感のような、そんな感じがいたしますわ。もっとも気のせいだとは思いますけれど。
「ところで、銀のお嬢様は最近何か変わったことはあるか?」
「ロルフ、あなたまでそんな呼び方をなさいますの?」
「でも確かにグレタ様ってのはやばいかもしれないし、お嬢様って呼ぶのはいいかもしれないな」
「私も賛成いたします。グレタ様を呼び捨てにするぐらいでしたら、お嬢様とお呼びしたほうがよほどましというものです」
「グレタという名前も変えたほうがいいのでしょうか?でも身分証はグレタで登録してしまいましたわね」
「それはもう仕方がございません」
「そうそう。まあ普段呼ばなけりゃいいだろう」
「でも、銀のお嬢様なんてなんだか仰々しい呼び名が浸透しておりますのね。フードなどは外さないようにしておりますけれど、目の色でしょうか?」
「そうでございますね」
マスクでも目の色は隠せませんものね、鋭い方がいらっしゃるものでございます。
「それにしてもマリオンお兄様のお役に立てるように、今日も魔法の練習を頑張らなくてはなりませんわね」
「魔術と違うから俺には教えられないしなあ。魔法っていうのはイメージなんだろう?つまりイメージ力が貧困ってことだな」
「見識不足なのは認めますわ」
ぐうの音も出ないとはこのことでございますわね。
イメージ力を高めるには見識を増やすことが大切でございますわよね、本で読むだけではなかなかに難しいものがございますわ。
最近はもっぱら魔法の練習を兼ねて、水の針と糸で刺繍を行っておりますの。
水の魔法を固定化させておりますので、随分と珍しい品となりますので上流階級の貴婦人に人気の商品でございます。
一見はただの白い生地ですが、光の具合などで模様が浮かび上がるという、夜会などでは人気なのでございますよ、私もいくつか持っておりました。
水を固くするという練習で始めたものですが、とても良い暇つぶしとお金儲けになっておりまして、これが世にいうウハウハというものなのでしょうか。
風魔法に関しては、時折空中で竜巻のような物を起こして掃除をするという方法で練習を行ったり、髪を乾かす風を起こしたりして練習しております。
ところで、料理なのですが未だに私は関与させていただけておりません。包丁が危ないですとか言われてしまいますがモンスターと対峙するときにはナイフを持っておりますのに不思議ですわよね。
これも過保護の一つなのかもしれませんわね。
火を扱う場合はサーヴの得意分野でございますし、ロルフも料理は得意なのだそうで2人で仲良く作っているのです。
この時点でなんだか仲間外れのような気もしますが、主人という立場から仕方がないのかもしれませんわね。
王女であった私は本当に料理というものをしたことがありませんし、包丁の扱い方も知りませんもの。
話しは変わりますが、改装したお部屋には植物が増えました、そのお世話は私の担当となっておりますのよ。
水やりや剪定は私の魔法の得意分野と言ってもいいものですので、こればかりは譲りませんでしたの。
それになんといっても、四季咲きのスミレが手に入ったことが嬉しくて仕方がございません。私の初恋というにはあまりにも幼い感情でございましたが、初めていただいた花がスミレでございましたので、今もスミレが大好きなのでございます。
他の兄弟姉妹には地味な花だと笑われてしまいましたが、夢の中でもドレスには必ずスミレの刺繍を入れるようにしておりました。
けれど、スミレが好きなのは知れ渡っておりましたが私に送られるのは白薔薇や白百合が多かったように夢の中では思いましたわね。
私の持つ色が全体的に白いからからでしょうか?わかりませんわ。
好きなものをおくっていただいたほうが好感度が上がりますのに、無駄に豪華な宝石など何の興味もございませんわ。
私はこのようにひっそりとでも美しく咲くスミレが目の前に在るだけで幸せでございます。
「ああ、でもマリオンお兄様は春にはスミレをくださいましたわね」
ふと夢の中の記憶御思い出す。
16歳で成人を迎えるこの国ですけれども、そのお祝いと言ってマリオンお兄様はスミレの花を贈ってくださいましたし、そのほかにも春にはスミレを何かの理由付けをしては贈ってくださいました。
腐敗した王族の中でも、マリオンお兄様だけは腐敗せず、泥の中で咲く水連のような方でいらっしゃいましたわね。
ですから、マリオンお兄様がおっしゃるように何度も、私の夢の中で出てきたように暗殺されてしまったのかもしれません。
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