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 迷宮ダンジョンに戻り、拠点にしている小部屋にロルフ用のスペースを確保いたしました。

 異性ということもあって着替えなどのスペースも区切る必要が出てきましたので、この小部屋が少し手狭になってきたように感じてしまうのは仕方がないことなのでしょうね。

 ロルフは怪力の持主とのことなので、仕切り用の布を支える鉄の棒を地面に突き刺すという作業を、あっさりとこなしてくださいますので、私たちも苦労することはありませんでした。これだけでも良い買い物をしたと思います。

 それと、ロルフは成人男性ということもあって、私とサーヴの倍ほどの量の食事を召し上がるようで、その食べている姿は感心してしまうほどです。

 けれど、貴族に飼われていたというだけあって、下品な食事というわけではなく、マナーをちゃんと守りながらも食べるスピードが速いという感じですのよ。

 筋肉も立派なものを持っていますし、背も高いロルフなのですが、その名前と姿を見た時からなんとなく気になっていることがあるのですが、どうしても思い出せないのですよね。

 こう、喉元まで出かかっているのですけれども、引っかかった小骨のようにもどかしい感じです。


「ロルフは貴族が嫌いなのでしたわよね?私たちはどうなのでしょうか?」

「冒険者をしている貴族なんて山ほどいるが、俺が嫌いなのは堕落した傲慢な貴族だ。自分を高めようとするやつらまで嫌いというわけではない」

「そうなのですか」

「もっと俺に力があれば、腐った貴族を一掃したやりたい」

「まあ・・・」


 その言葉に、なるほどと納得いたしました。

 彼は夢の中で革命を先導していた男性だったのです。魔族の血を引いているからでしょうか、あまり今の姿と変わりない容姿だったように思います。

 もっとも私が彼にお会いしたのは処刑された時の一度のみでしたので、あまり覚えていなかったのも仕方がありませんわ。

 確か、奴隷の身でありながらも主人を殺害し革命を起こしたと話に聞いた気がしますが、困りました、私は殺されてしまうのでしょうか?けれども殺された貴族は王族に媚びを売る腐った貴族の代表のような方でしたし、私たちとは違いますわよね。


「私が王族の出だと言ったらどうなさいます?サーヴの貴族の出だと言ったらどうします?」

「王族?ということは、行方不明の第四王女ってやつか?さっきも言ったように俺が嫌いなのは堕落しきったやつらで、こうして自分の手でどうにかしてる奴なら気にしない」

「そう、ならいいのですわ」


 殺される心配は無いようでほっと致しました。


「魔族の血を引いているというと、魔術を使うのでしたわよね。魔法とは違ったものですけれども魔力を使うという点では同じですわ。どんな違いがあるのでしょうか?」

「魔法は精霊の力を借りる。魔術は自分の魔力で現象に干渉する。生み出すのが魔法なら作り出すのが魔術だ」

「よくわかりませんわね」

「俺にも具体的な違いは何かと言われたらよくわからない」

「そうなのですか。ところで、ご両親の記憶はございますか?」

「ああ・・・母親は俺を産んですぐに死んでしまったが、父親が少しの間面倒を見てくれていた」

「どうして離れてしまいましたの?」

「死んだと聞かされた。魔物の退治の際に死んでしまったのだと部下の魔族に言われて放り出されたんだ」

「まあ、お気の毒に。お優しいお父様でしたか?」

「ろくでなしだった。俺の事なんか気にしてないような男で、引き取ったのも物珍しさからだったんだと思う」

「そうなのでしょうか・・・」


 物珍しさから引き取るなんて、魔族というものも人間と変わらないのかもしれませんけれども、部下の方もひどいですわね、放り出すなんて人間との間の子供だからなのでしょうか?


「それにしても、第四王女の話しは魔族の間でも噂になってた、もっとも今はどうか知らないがな。古の姿を持った稀有な存在が生まれたと父親が言っていた」

「あら、そうなのですか」

「俺も今こうして目の前にしてやっとわかったが、その色はすごいな、神々しい感じがする」

「誉め言葉が過ぎますわね。サーヴもよく過剰評価いたしますけれども、貴方もなのかしら?」

「過剰評価じゃないだろう。まだ6歳だった言うのに十分に美しいと言える。神に愛される子どもと言われたらそうなのだと信じてしまうほどだ」


 そんな私を斬首刑になさいましたけれど、今は関係はございませんので敢えて言うことは致しませんわよ。

 天涯孤独というわけですけれども、今日からは私の奴隷になったのですから家族も同然ですわよね。

 サーヴはお姉ちゃんと呼んでいますけれど私にとっては母も同然ですし、ロルフもなんだか私の世話を焼きたがる節があるように感じますので、お兄ちゃんというよりも父のような感じでしょうか?

 そうなりますとサーヴとロルフが結婚すれば素敵なことになりますわね!もちろん強要は致しませんけれど。

 ロルフの呼び方もロルフお兄ちゃんにいたしましょう。奴隷ですけれども私はまだ6歳ですし、そう呼んだほうが自然ですわよね。

 18歳までの夢の中の記憶がございますので、なんだか6歳ということを時々忘れそうになってしましますが、6歳の体で無茶をするわけにもいきませんので毎日言い聞かせております。

 明日はロルフの戦闘能力を確認するために3人でダンジョンに向かって、モンスター退治をいたしましょう。

 怪力という特徴があるそうなのでどのような戦闘スタイルなのか気になりますわ。

 私はスピードというか、小回りの利く体を生かした戦闘スタイルですし、サーヴはオーソドックスな剣戟を駆使した戦闘スタイルですものね。

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