4-1 奴隷の男性

 白銀紅蝶の鎧ドレスのおかげで、あっそう名付けてみました、そのままですけどいいですよね?ともあれ、その鎧ドレスのおかげで、ダンジョンの1階のモンスター退治はとっても順調です。

 流石にここを拠点として数か月、何人かの冒険者さんと遭遇することもありましたが、皆様私たちに子供連れでこれ以上深く潜らないようにと忠告してくださる親切な方ばかりです。

 やはり1階は初心者でも大丈夫なのだそうですが、2階からは強力なモンスターが出現するようになるとのことです。

 もっとも、1階の地図作りもまだ終わっておりませんので焦って2階にいくつもりはございません。

 一か月に一回ダンジョンの外に出てドロップ品を売るだけでも結構生活資金には困りませんので、まったりと生活をしております。

 けれど、王都に行くことなのですが、最近少し問題が起きてしまいました。

 なんと、私、つまり第四王女が行方不明になったとついに国王が御触れを出してしまったのです。まさか出すとは思っておりませんでしたので驚きですが、おかげで似たような背格好の女児は容姿を確認されるということになってしまい、一回目は賄賂で誤魔化せたのですが、今後私が王都に行くのは難しくなってしまうでしょう。

 それにあたり、私がサーヴの留守の間一人にならないように、やはり奴隷を買うことになったので今回も賄賂を渡してこっそりと王都に侵入しました。


「買うのであれば、戦闘もできて魔法も使えるようなものがよいでしょう」

「でも高額になっちゃうわよ?」

「何のために金貨を持ち出したのですか、使うときに使うべきです」

「なるほど」


 確かにここで使わずにいつ使うのかという感じですものね。

 二人で奴隷市場に行きますと、私の失踪が関係しているのかわかりませんが随分と警備が厳重な気がします。


「誰がいいかしら?」

「誰でも構いません、条件さえ満たしていれば男でも女でも」

「そうよね。まあ奴隷商に聞いて回ってみましょう。ピンとくるものがいるかもしれないわ」

「そうでございますね」


 幾人かの奴隷商に条件を伝え、金額は気にしないと言って見せてもらった人たちはどなたも見目の良い方々ばかりで、どうやら貴族の子女が愛玩護衛用の奴隷を探しに来ていると思われているようです。


「顔は気にしないから、とにかく信用のできる人がいいのよ」

「ふむ…」


 もう何人目か数えていませんが、少しくたびれた感じの奴隷商の男にそう伝えると少し考えた後、部下に指示を出して一人の男性を私たちの前に見せました。

 その人物を見た瞬間思わず目を見開いてしまった理由は、彼の目の色です。紅い目は魔物や魔族の血を引いている証拠だと言われており、忌み児として扱われることが多いのです。


「この男は魔族の血を引いていて魔術が使える。戦闘能力も高いが、もう年だからな買うには少し年を食ってるってことでなかなか売れないが、見目も悪い方じゃない。ただ、貴族に昔飼われてたせいで貴族を相当憎んでるから手懐けるのには苦労するだろう。それでもいいなら金貨5枚だ」

「高すぎるんじゃありませんか?売れ残りなのでしょう?」

「高性能だからな」

「いいじゃない。サーヴお姉ちゃん、彼にしましょう」


 私の言葉にサーヴが一瞬顔をしかめましたが、奴隷の首輪さえはめてしまえば私に危害を加えることはできないと奴隷商に説得され、やっと頷いてくれました。


「しかし、危害を加えないのはそのお嬢様にだけだぞ、お嬢さんには危害を加えるかもしれない」

「そのような油断は致しません」

「そうかい」


 何やら不穏な会話ですけれども、まあ気にしないでおきましょう。

 私たちは契約を済ませ、奴隷の首輪をつけて私を主人として傷つけず守るという戒めを刻み込んで冒険者ギルドに向かいました。

 この男性の身分証を発行してもらうためです。


「名前はロルフ」

「そう、ロルフというのね。自己紹介を改めてしましょう、私はグレタで、こっちがサーヴよ」

「くれぐれもよろしくお願いしたします」

「わかった」


 なんとも覇気の感じられない方ですが、奴隷商の方のお墨付きですし信用いたしましょう。

 銀貨5枚で身分証を発行してもらって、いつものように串焼きを買って食べ歩きながら、ロルフの防具や武器を見に行きます。なんでも斧や槌を得意とするたしく、魔族の血なのか怪力の持ち主なのだそうです。

 あいにく私が金庫から盗み出した武器に該当する者はありませんので、街で調達するしかありませんし、防具も同じですわね。

 前線に出ることが多くなるでしょうし、しっかりとした防具をつけておくに越したことはありません。

 もっとも、そうお伝えしたところ、ロルフは少し驚いたような顔をして使い捨ての奴隷にそんな気を回すなんて変わっていると言われてしまいました。

 そうなのでしょうか?高いお金を払って買ったのですから大切にすべきですよね?

 魔術が使えるとのことなのですが、魔力を使用するという点では魔法と大差がありませんので、魔力が通る武器を探して何件かお店を梯子をしていって、夕方近くにやっと満足できる武器を手に入れることが出来ました。

 防具の方は以前から目を付けていたものがありましたので、割とすぐ決まりましたが、武器はやはりいいものを探し出すのは難しいですね。

 そういえば、ロルフのベッドや椅子なんかも買っておかなくてはいけませんから、夕暮れ時の店が閉まる寸前に家具屋に駆け込んで出来合いの物を購入して空間魔法にしまい込んで、慌てて王都を出ることになってしまいました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る