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 ダンジョンの1階をサーヴと二人で探索していると、数匹のモンスターと遭遇しましたが、サーヴのおかげで問題なく生き残ることが出来ました。

 サーヴは自分で言っているよりもずっと武芸に優れているようですが、本人は武器の力のおかげだと言っています。

 魔力のある武器は少ないのですが、魔力が宿っているとわかる人が少ないので価値がわからず、安物とまとめられて売られることもあるそうなのです。

 私が見つけたのはそう言ったもののようですが、私はやはりサーヴの能力が高いのだと思っております。


「まあ、私の方は間違いなく武器のおかげですけれど」

「否定は致しません」


 私は両手に短剣を持ちモンスターと戦うスタイルを取っております。

 短剣自体は装飾の付いたダガーですが、魔力を通す力がありますので、自然と水と風の属性が付いたものになります。

 属性の付いた武器や防具はとても高価なはずなのですが、気が付かれないというのは悲しいものですね。

 武芸の心得はありますが、体は6歳の物ですのでどうしても戦闘では不利になってしまいます。短剣しか扱えないので接近戦になるのも、サーヴはあまりいい顔をしません。

 魔法に関しても、魔力は多いのですが夢の知識で修得しているのはすべて基礎魔法のみですので、あまり役に立たないと思います。

 もっとも、サーヴに言わせると初級魔法なのに中級魔法レベルのものになっているとのことです。

 それは良いことなのですが、それはつまり魔法の威力の加減がちゃんとできていないということの様な気がして、少し不安が残ってしまいますね。

 洞穴のダンジョンは書物で確認したところ、恐らく迷宮ダンジョンだと思われます。このダンジョンにはいくつもの小部屋がありますので、私たちはそこを拠点にしているのです。

 書物で魔法の勉強もしておりますが、集めた食料が尽きる前にモンスターの戦利品をギルドに売る必要がありますね。

 その時にサーヴには冒険者ギルドに登録してもらう予定なのですが、私を此処に一人で残すことが不安のようでなかなか実行に移すことが出来ません。

 まあ一度ぐらいなら大丈夫かもしれませんね、実験も兼ねて、……もしばれてしまったらダンジョンの中に引きこもるしかありませんものね。 

 もっとも、食料は数か月分ありますので問題はありません。これも食糧庫から盗んだりしております。私も盗人が板についたというところでしょうか?

 調理はサーヴが行ってくれますが、2か月間の間にキッチンメイドに教えてもらっただけという割には、なかなかの腕前だと思います。

 そもそも、こんなところでちゃんとした食事が出来ること自体がおかしいのかもしれませんけれど、まあかまいませんわよね。

 空間魔法って本当に便利ですけれど、適性を持つ人が少ないのが難点な魔法です。魔術でも似たようなものがあるということなのですが、まだお目にかかったことがありません。

 というよりも、魔族の血を引いた人と会ったことがないというべきかもしれませんね。

 魔族は奴隷になりやすかったり、危険な存在として扱われることが多いのです。普通の人間よりも強力ですから恐れているのですよね、きっと。


「モンスターの戦利品もそれなりに集まりましたし、いい加減に外に出たほうがいいと思いますけれど、私用の仮面もありますし、一緒に行けばよいのでしょう?」

「そうですね、それでしたら安心です」

「でもその敬語と様付けは直さなければいけませんわ」

「そう、ですが……身についたものは中々。グレタ様もその言葉遣いは平民にしてはおかしいものになってしまいますよ」

「ああ、そういえばそうですわ。えっと……こんな感じでいいかな、サーヴお姉ちゃん」

「よろしいかと存じます」

「あら、サーヴお姉ちゃんってば敬語は駄目だっていったじゃない」

「……わかったわ。気を付けるわ」


 少し硬い気もしますが、徐々に慣れていきますわよね。

 それにしてもダンジョンの中でまでお風呂に入れるとは思いませんでしたが、これは私とサーヴの合わせ技です。

 風の魔法で少しずつ地面の岩を掘って浴槽にしたところに水魔法で水をためて、使用するときにはサーヴの魔法で温めてもらうようにしています。

 洗濯物も魔法で何とかなりますので、魔法ってとっても便利ですよね。

 もっとも、サーヴに言わせると、こんな使い方が出来るほどの魔法力は普通あまりないそうなのですが、出来たのですからいいですわよね。

 洗濯物も初めて行いましたが以外と気を使う作業で、ちょっと楽しくなってしまいました。刺繍のお勉強をするよりもずっといいと私は思いますわ。

 もっとも、手が荒れてしまうのでサーヴは街に出たら手荒れを防ぐクリームを買おうと言っています。確かに手に傷が出来ると痛いですから、予防はすべきですわね。


「治癒の魔法が使えればいいのだけれど、適性がないし水魔法の治癒は最上級魔法に近いからまだまだむりそうで…無理そうよね」

「いずれ修得できると思いますよ。グレタ…には才能がありますから」


 様付はこらえたみたいだけれど、敬語は中々直りそうにありませんね。

 私も言葉遣いがつい戻ってしまいますし、長年の癖というものはどうしようもないのでしょうか?

 うーん設定を変えるべきでしょうか?貴族の家にいたけれども気まぐれで私は大けがを負わされてサーヴが連れ出してくれたとか。

 言葉遣いもそこで叩き込まれたとでも言えばいいですわよね。

 様付だけなんとかすればいけるでしょうか?

 うーん、前途多難とはまさしくこのことかもしれませんけれども、なんだかワクワクしてしまいますわよね。

 なんといっても生きているのですもの。

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