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グレタ=ハフグレン=ディンケラ(6)

称号:第4王女、盗人、古の継承者

適正:水・風・空間


シーヴ=フェルン=ストレーム(16)

称号:E級冒険者

主人:グレタ=ハフグレン=ディンケラ

適正:火


 これが私たちのステータスになります。専門の場所に行けばもっと詳しいことがわかるのですが、自分で今確認できるのはこの程度の事です。

 神からの祝福や能力値は専門家に見てもらう必要がありますが、そうすれば私の素性がばれてしまいますから無理ですね。

 鑑定のスキルを持つ人にこっそり見てもらうか、自分で修得するしかありません。その事が書かれた本も拝借いたしました。

 ……いやですわ、盗むことに抵抗が全くなくなってしまってますわ。これも堕落した王族の血ゆえなのでしょうか?困ってしまいますね。でもまあ、かまいませんけれど。

 サーヴ用の武器や防具も手に入れましたし、本も集めました。一応金貨や銀貨も持って行くという話しになったので、それも手に入れることになりました。それにしても、こんなに盗んでいるというのに、全くばれないというのは随分とずさんな警備ですよね。

 まあ、守る価値もないということなのかもしれませんわ。

 さすがに国宝級の物は警備が厳しいですが、子供の遊び場にそれほどの警備を配置するわけにはいかないのでしょうか?一応この国の未来を担う子供なのですけれども、父の考えは解りませんわね。


「月のない夜の夜明けが良いでしょう。姿を隠しやすいですし、月のない夜は皆が闇を恐れて外にあまり出ることがありません」

「そうなのね。私は月のない夜は好きよ、星がいつもよりも煌めいているように感じるもの。確かに星明りは月灯りよりも心もとないけれど、綺麗でしょう?」

「はい、けれども多くの人は闇を恐れてしまうものなのです。雨の日が最もいいのですが、ここの所晴れている日が続いていますから」

「あらだったらそうしましょう?急ぐことじゃないわ、まだ12年もあるのよ。成功率が高い方がいいに決まっていますもの」

「かりこまりました。では雨の日に……、グレタ様」

「なにかしら?」

「私は何があってもグレタ様の味方です」

「ありがとう」


 夜寝る前の寝室での秘密の会話だけれども、ここ数週間で今まで以上に絆が深まったような気がいたします。

 サーヴは実は古い伯爵家のご令嬢だったそうなのですが、家での家族関係がうまくいかずに家と縁を切ったのだそうです。そういう子息令嬢は実は少なくないので、王城で探せばきっとそれなりの人数がいると思います。

 王女に相応しい無駄に豪華な寝室は壁も厚いので相談事をするにはうってつけですけれども、そのせいで姦淫がまかり通ってしまっているのは問題ですね。

 王妃のお部屋に通う男性が何人いるのかは知りませんけれども、後宮を持っている父といい勝負なのではないでしょうか?

 私のお母様はもう死んでしまっていないけれど、その分祖父母は私を溺愛していると言ってもいいかもしれません。この体の色がそれを増長させているように思えます。

 古の継承者という称号もまた、関わっているのでしょうね。父もお母様のなくなった私にこうしてサーヴのような優秀なものを付けたのは、そういうことが関連しているのでしょう。


「普段の住まいを手に入れる必要がありますが、それなりに信頼と実績を重ねなければちゃんとして家を購入することはできません。しばらくは野宿になりますが、グレタ様はどうお考えなのですか?まだダンジョンで暮らすとおっしゃるのですか?」

「だって私の色はこうでしょう?なるべく人目を避けるべきですもの」

「確かに、貴族に傷をつけられたという理由でしたら確かに人目を避けられるでしょうが、全く表に出ることがないということは難しいでしょう。それになによりもグレタ様はお美しくいらっしゃいます。これからより一層美しくなっていくでしょう、私は心配なのです。私がいない時に何かあったらと思うと」

「でも、サーヴ以外は私は信用していないんだもの、連れていくことはできないわ」

「奴隷を買いましょう。その者に警護させるのです」


 奴隷、という言葉に首を傾げますが、確かに悪い方法ではありません。けれどもどうにも気が進みませんね。

 別に奴隷を否定しているわけではありません、もっとも奴隷の待遇がひどいものだということも聞いていますがそうではなく、お金で買った人を信用できるかと言われると、難しいと答えるしかないのです。

 サーヴもお金で雇われてはいますけれど、彼女は私を最後まで守ってくれたという夢の記憶がありますので信頼しております。


「やっぱり奴隷はいやだわ。もしそういう方がいればいいけれども、いつか見つかるまでは私は表に出ないようにすればいいわ。サーヴには苦労を掛けてしまうけれども許してくださる?」

「もちろんです。私はグレタ様のメイドですから頼ってください」

「頼りにしてますわ。貴女がいてくれて本当によかったと思っているのですよ。私に足りないところを補ってくださいますもの」

「私だけではまだ不足です。脱走するまでにもっと知識を蓄えておきます」

「お願いしますね。ああ、でも何度も言いますけれど、脱走後はグレタ様ではいけませんわ。グレタと呼んでくださいませ」

「けれど」

「私はサーヴお姉ちゃんと呼びますわよ?」

「それは、お望みでしたら結構ですが私は中々できそうにありません」

「がんばってくださいませね」


 何度目かのやり取りに思わず苦笑を浮かべてしまいますが、こればっかりは無理にでもしていただかなくてはいけませんわね。

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