第3話 転 ~冒険開始~
待ってろよ、リンちゃん。必ず助け出してやるぞ。
そう心に誓い、俺は仁王立ちで、オーガの消えた方をにらみつけていた。
背負いこんだ木製の弓と、自慢の桃尻に食い込んだ、くまちゃんパンツの締め付けが俺の決意を強くする。
とはいえ……こちらは土地勘もなく、スキルも魔法も武器もない。そもそも全裸だ。いや、くまちゃんパンツは穿いているけども、先っぽとタマが収まりきらなかったので結局急所はなにもかも丸出しだ。
手持ちの荷物も食料もない。水場すらもわからない。ぶっちゃけ俺、遭難してる。
……まじでどうしよう。
と――
「グルルゥウウウウウ……」
背後で、ケモノの唸り声がした。
俺は総毛だって振り返った。
そこに、魔物がいた。俺の背丈ほどもある巨体。漆黒の毛並みと体つきは犬そっくりだが、その頭は三つもある。
なんてこった、これはゲームでもラスボス手前とかで出てきたりする(たまには序盤で出ることもある)、地獄の番犬ケルベロスじゃないか!!
三つある獣の顔、すべてがヨダレをだらだらたらし、目をぎらつかせ、俺の顔ほどある鼻をヒクつかせている。食われる。死ぬ。
ケルベロスは顎(あぎと)を開き、マグマが流出したかのような低い声で、俺に向かってこう言った。
「桃尻太郎さん桃尻太郎さん。お腰につけたくまパンツ、ひとつ私にくださいな」
なにそれ。
その時、右側の大木が突然ボギィッと折れて、地面に轟音をたてて転がった。大木よりも太い腕、岩石のような胸を持つ、緑色の巨大ゴリラがそこにいた。
「桃尻太郎さん桃尻太郎さん。お腰につけたくまパンツ、ぜひ吾輩にくださいな」
はるか頭上、森を揺るがす大風と、バッサバッサと羽ばたく音。轟音とともに大地に降り立った、翼竜(ワイバーン)がささやいた。
「桃尻太郎さん桃尻太郎さん。お腰につけたくまパンツ、どうかアタシにくださいな」
「…………あ…………あげましょう、あげましょう。これからオーガの征伐に、ついてくるならあげましょう……」
「御意。マスターのおおせのままに」
三匹の魔物は膝をつき、俺の前に頭を下げてみせた。
俺は翼竜の背に乗って、森の上空を見渡していた。
オーガの住処を探すためである。
「しかし全裸に上昇気流はキッツいな。さむさむー」
風にあおられ、弓の先端に括り付けたくまちゃんパンツと、俺の金玉がヒラヒラ揺れる。結局1000字くらいしかパンツ履いてなかったけども、タイトル通りだから問題ない。褒美にあげると約束したものに色んな汁がついてはよくないからな。特にケルベロスが、今すぐ脱げと唸ったもんで仕方がない。
そういえば、魔物たちがなぜにそこまでくまちゃんパンツを欲しがったのか聞いてみた。
いわく、ケルベロスは嗜好品。地獄の番犬にとってエルフのおぱんてぃは芳香らしい。とっても共感したので、俺たちはすぐに仲良くなった。
バイオゴリラは彼女へのプレゼント。メスはリンと同じくらいに小柄なんだって。ちんこ入るのかソレ。それとも体のわりにちんこ小さいのかバイオゴリラ。
翼竜は産卵の巣作りに、あたたかい布がほしいんだと。この柔らかさが最適とのことである。
わかるようなちょっとよくわからないような理由だけども、とりあえず、これでオーガと戦う仲間ができたことは本当に心強い。なんせ俺はごく一般的成人男性でなんの能力もないからな。全裸だし。
翼竜が声をあげた。
「マスター、あったわ。あの中州。オーガの住処であるオーガ島(しま)よ!」
「おおっ、意外と近かったな。だけどこうして空からじゃなきゃ見つけからなかったろう。ありがとう翼竜」
「べ、べつに、あんたのためにしてやったんじゃないんだからね」
ツンデレチョロインな翼竜とともに、ケルベロス、バイオゴリラと合流する。
「桃尻太郎よ。今度は私の背中に乗るといい。この河の幅ぐらい、ジャンプで中州までいってみせるぞ」
「では吾輩は、突っ切るための道を作ろう」
そういって、バイオゴリラは目の前の巨木をなぎ倒す。ケルベロスは一声鳴くと、宣言通り風より早く駆けだした。
上空には翼竜が舞い、鳴き声で道を示してくれる。
俺はエルフの弓を握りしめた。
「いま行くぞリン! 心強い仲間たちにガッツリ全力で依存しているおかげで、勇ましく勃ち上がった俺の急所を見てくれよなっ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます