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 熟した実を収穫する際は、十分に準備をしてから行うべきと修二お父様がおっしゃっておりましたので、私は入念に準備をいたしました。

 まずは舞花が自分のものにしたと思っている男性への接触と対話。これに関しましては多少の脅しも加えさせていただきましたが、今後も舞花を好きにできる権利と引き換えにご納得いただけました。

 ええ、舞花は在原の家の秘密クラブで働いていただくことが決定いたしましたわ。もしそれを拒否するようでしたら実ではなく命そのものをもぎ取らなければなりませんものねぇ。

 そうして私は再び修二お父様と一緒に銀座の高級クラブへと足を運びました。この日は予定を合わせて舞花のお客様・・・が勢ぞろいしておりますので舞花はさぞかし驚いているのではないでしょうか?

 あ、他のお客様には休日ということで、ご遠慮申し上げておりますのでご心配には及びませんわ。

 お店についた私たちにすぐさま黒服の方が近寄ってきて奥の席へ案内してくださいます。今回は私は修二お父様の隣をキープしておりますわ。

 そうしてしばらくはお店のホステスのお姉様方と談笑していたのですが、他のお客様の対応が終わった舞花が来た瞬間に熟した身の収穫が開始されます。


「修二パパ、来てくれたのねマイうれしぃ」


 そういって修二お父様の隣に座ろうとした舞花を、修二お父様が手で制止なさいます。


「どうしちゃったの修二パパ。あ、もしかして遅くなったから怒ってるのぉ?」

「いや、もう君の相手をするのにもいい加減飽きたからね」

「え?」


 意味が解らないというような顔でございますね。まあ、実際に意味が分かっていないのでしょうけれども。


「ねえ舞花、まだわかりませんの?この状況がおかしいとは思いませんの?ここにいらっしゃるのはすべて舞花のお客様ではありませんか。こんなにタイミングよくお忙しい皆様が御集りになるなんて可笑しいでしょう?それに、修二お父様を自分のものにしたような気でいるよですけれども、どうしてそう思ってしまったのかしら?私から奪うのなら私の代わりに養女になるぐらいのことを昔の貴女ならしていたのではなくって?落ちたものですわね」

「はあ!?」

「あらいやだ、随分とガラが悪くなったのではなくって?私のものだけでは飽き足らず、ここにいらっしゃるお姉様方のお客様を奪ったせいかしら?それともすさんだ生活のせいかしら?どちらにせよ情けないですわね。もともと、外面が良いだけで中身は屑でしたけれども」

「ちょっと!なにいってんのよ!……修二パパぁ何とか言ってやってよぉ」

「ナントカ」

「なっ馬鹿にしてるの!?」

「馬鹿にはしてないさ、ゴミだと思ってるだけだ」

「なっな…」


 舞花は顔を真っ赤にして修二お父様を指さします。人を指さすだなんてはしたないですわね。

 それにしても修二お父様も容赦がありませんわ。ここまでのうっ憤を晴らすとおっしゃってましたし、とことんやるおつもりなのでしょうか?

 私の出番も取っておいていただかないと困ってしまいますのに。


「ゴミでなければ寄生虫だな。ああ、いやむしろ寄生虫の方が正しいかもしれないな。かつては雪花に寄生し、今はここに集まっている男たちに寄生して生きている。私は断っていたがこの中には体を使って垂らしこんだ人も多いのだろう?証拠は挙がっているよ、在原の経営する調査会社は優秀だからな。そんな汚れた体を私に差し出そうなどと欲も考えたものだ」

「な、なに言ってるの修二パパ」

「その呼び方もやめてもらおうか気持ちが悪い」

「そうですわね。修二お父様は私のお父様であって貴女のお父様ではないのですから」


 修二お父様、私の分も残しておいてくださいませ。


「ねえ舞花、貴女ご自分のご子息が今どうなっているのかちゃんと理解しておりますの?」

「猛がどうかしたの?大和君がちゃんと面倒見てるわよ」

「あらやだ、大和様が今どうなっているかわかっておりませんの?」

「なによ」

「有閑マダムの方々に可愛がられていらっしゃいますのよ、家にはほとんど帰ってはおりませんの。もっとも、貴女も家にはほとんど帰っておりませんから気が付かなかったのかもしれませんけれどもね」

「じゃあ猛は誰が面倒見てるのよ」

「在原の分家で引き取りましたわ」

「なんですって!そんな勝手なことが認められると思ってるの!」

「育児放棄なさっておいてそれはどうなのでしょうか?法律的にも認められておりますわよ。今は分家の一つの養子となっておりますわ」

「そんな…」


 あら、なんだかショックを受けたような顔をしておりますわね。一応母性は残っていたのでしょうか?それでしたら育児放棄などしなければよかったのに。

 まあもっとも、お金を稼ぐので育児どころじゃなかったと言われたらそれまでなのですけれどもね。

 どちらにせよ育児が出来る環境とは言えませんでしたので、猛に関しましては在原の分家で引き取らせていただきました。


「大和様に関しても、あんなに相思相愛でいらっしゃったのにもかかわらず、最近ではほとんど会話もなさっていなかったようですわね。大和様が愚痴をこぼしていらっしゃったそうですわよ。有閑マダムの方々の方がよほど素晴らしいのですって」

「何よ有閑マダムって、オバンの集まりじゃない」

「まあ酷いおっしゃりようですこと」

「有閑マダムがオバンなら君が相手をしているのはオジンってことになるな。なんだ、夫婦でやっていることに変わりはないんじゃないか」

「わ、私は家のために働いているだけよ」

「遺伝子上の両親の借金を返す羽目になってしまったんですものねぇ。けれど仕方がありませんわ、在原を敵に回したも同然のことをしたんですもの」

「な、なにをしたっていうのよ」

「あらお分かりにならないの?この私に対してあの無礼な行いをした娘の親というだけで十分に敵対するものとみなされておりますのよ。なんといいましても、私は昔から遺伝子上の親には愛されてはおりませんでしたし、未練もなにもございませんもの」

「そんなのアンタが悪いんじゃないの。アタシはパパやママに愛される努力をしたわ。アンタはそれをしなかった!」

「愛される努力というのが、私を蔑むことだとしたら、そのような努力したくもありませんわね」

「何よ何が悪いっていうのよ!双子だからって比べられるアタシの身にもなってみなさいよ」

「それこそ知ったことじゃありませんわね。そんな理由でこの私から物や人を奪っていったのでしたら、なんてお粗末な理由なのでしょうか。そんなもので得た物なんて虚しいだけでしょう?けれども、まあ、その技術もここでは役に立ったようで何よりですわ。お姉様方からお客様を奪えたようですものね」

「私は悪くないわ。奪われる方が悪いのよ」

「奪われる方が悪い。素晴らしい言葉だと思いますわ。ですから私もこの言葉を舞花に差し上げましてよ、身から出た錆、もしくは自分で蒔いた種」

「どういうことよ」

「そのままの意味でしてよ。貴女は今日でこのクラブを首になりますの。ああ、でも安心為さって次の就職先は決まっておりますから」

「は?」

「在原の所有する秘密グループの一つで働いてもらうことになる。ここにいらっしゃる君のお客様・・・も継続して君を買う・・ことで話し合いは済んでいるよ。仁木大和が有閑マダムの玩具なら君は紳士クラブの玩具になるというわけだ」

「そんなのありえないわ!」

「残念ながらあり得ますの。それに、これ以上表舞台で殿方をたらしこまれますと私の立場にも影響が出てしまいますので、大変困ってしまいますし、このまま表舞台からは下りていただくしかなくなってしまいましたのよ。要は自業自得ですわね」

「冗談じゃないわよ!」

「ええ、冗談なんかじゃありませんわ。よかったですわね、遺伝子上の両親の借金も返せますし、貴女が望む様に殿方に愛されますわよ」


 ただし、玩具としてですけれども。

 あら?舞花の様子がなんだか変ですわね。茫然自失というものでしょうか?以前でしたら泣き叫んでもおかしくありませんのに、成長したということでしょうか?

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