03
「雪花お姉様、おっしゃっていたご令嬢にお話を聞いてまいりましたわ」
「ありがとう望さん、それでいかがでした?」
「なんでもお父君の女遊びの派手さは昔からだそうで、自分ぐらいの女性に手を出しているのも、別に問題はないそうですわ。ただ、お母様の方は随分プライドを傷つけられたと思っていらっしゃるそうです」
「そうですか、流石は望さんですわね」
「このぐらいいつでもお申し付けください」
ホステスのお姉様方からの情報も重要ですが、実際に舞花の被害にあったお宅のご令嬢やご子息にお話を聞くことも、大切な情報収集ですわよね。
数人にお話を聞きましたら、やはり舞花という自分と同じぐらいの少女に手を出していることへの嫌悪感を感じている方は少なからずいらっしゃるようです。つまり、巡り巡って私への悪感情へとつながってしまうというわけですわね。
それと、その奥様方なのですが、どうやら被害者の会ではありませんがとある方が中心になってサロンのような物を開いていらっしゃるのだとか、なんだか不穏ですわよね。
あのあとも、修二お父様は定期的に舞花のところに通っていらっしゃるようで、舞花の中ではすっかり私から修二お父様を奪えたと思っているのではないでしょうか?
そんなわけがないのですが、修二お父様ってば舞花にいい思いをさせすぎなのではないでしょうか?
まあ、貢ぎ物は落としテクニックの基本などとおっしゃっておりますので何かをプレゼントなさっているのかもしれませんわね。ここ最近私にも何かにつけてプレゼントをくださいますのでその度に贈っているのだとすればかなりの頻度で舞花にそれなりのものをプレゼントしているのかもしれません。
かまいませんけれども、活用されるとよいですわよねぇ。ホステスのお姉様方のお話によりますと、やはり大和様のお話は避けていらっしゃるようで、家で仕事をしていると誤魔化しているそうですわ。
贈った品物を質屋に持って行かれるのは構いませんが、一度ぐらいは身に着けるのが礼儀というものですわよね。
ああでも、遺伝子上の両親の借金を返済しなければなりませんので、もしかしたらそちらに流れてしまっているのかもしれませんわ。
まさか、修二お父様にお金の無心などしておりませんわよね?そのような恥知らずな真似を他の方にもしているのだとしたら、本当に救いようがありませんわ。
まあ、救う気はありませんけれども。
さて、私は最近玉串の雑務と在原の花嫁修業の他は舞花のことで手一杯になっているため、宗也様とあまり一緒にいることが出来ずに寂しい思いをしているのですが、我慢できなくなったときは宗也様に思いっきり甘えるようにしておりますので何とかなっておりますわ。
まあ、翌朝腰が痛いのですけれども。
そんなわけで私は今宗也様に甘えている最中でございます。
具体的に言いますと、ソファの上で抱っこしてもらっている状態で様々な資料を眺めている状態といった具合ですわね。
資料の中には舞花の情報も入っているのですが、宗也様は見ないようにしてくださっております。
「宗也様、今度の懇親会なのですがやはりお義父様とお義母様はご参加いただけないのですか?」
「ああ、ちょうど海外でのパーティーに出席する予定が入ってしまっているからな。また俺たちが仕切ることになりそうだ」
「わかりましたわ。私もホステス役として頑張らせていただきます。最近は本業のホステスさんにも学ぶ機会がありましたので、以前よりも上手くできると思いますのよ」
「それは楽しみだ。最近は修二叔父さんと一緒に遊んでいることが多いから俺としては少し寂しいけどな」
「まあ、私も同じことを思っておりましたのよ。お揃いですわね」
そう思うとなんだかうれしくなってしまいますわね。
そんなことを考えていますと、宗也様が私が手にしていた舞花の被害者のリストの一部を指で指し示しました。何かありましたでしょうか?
「ここの奥方が最近ペットを欲しがっているらしい」
「ペットですか?」
見てないふりをしつつしっかりと見ていらっしゃるあたり抜け目がありませんわね。
それにしてもペットですか、宗也様が言うのですから通常のペットではないということなのでしょうけれど、いったい何でしょうか?
「ペットでわからなければ玩具、もしくは若い燕だな」
「ああなるほど、理解いたしましたわ」
そう言う意味でのペットですのね。けれども宗也様がおっしゃるということは、なにかあてがあるということなのでしょうか?
「元婚約者は今穀潰しだそうじゃないか。推薦してみたらどうだ?」
「まあ確かに、顔だけはよろしいですものね。けれども奥様をご満足させるテクニックをお持ちなのでしょうか?」
「そこは仕込むんじゃないか?そういう楽しみ方もある」
「そういうものなのですか」
「ああ」
「では、それも手配しておきますわね。遺伝子上の両親の借金を返済しなければならないようになっておりますし、いいお金になるのではないでしょうか?」
仁木のご両親に関してはもう息子夫婦に関わらないという条件付きで海外に逃がしましたので安心なのですけれどもね。
それにしても舞花ってば、こんなに殿方をたらしこんでよく身が持ちますわね。所謂絶倫というものなのでしょうか?ああでもこれは女性には適応されないのでしたっけ?でしたら淫乱?
遺伝子上の妹とはいえなんだか嫌ですわね。
「修二お父様がそろそろ仕上げをしたいとおっしゃってましたのよ」
「そうなのか?まあ、俺はそれにはかかわらないから好きにすればいい。困ったことがあったら言え」
「わかりましたわ」
本当に優しい宗也様で私は幸せですわね。
さて、舞花への追い込みも終盤になってまいりましたし、どうするかを決めなければなりませんわよね。
ホステスとして続けさせるのもよいのですけれども、大和様と同じように殿方のペットになるのもよいお金になるのではないかと思うのですよ。
在原の家が経営する秘密クラブの一つにそういうものもございますものね。
それにしても、舞花が人のものを欲しがるのは基本的に私限定だと思っていたのですが、こうしてみますとホステスのお姉様方のお客様、それも有力者を狙って奪っているようですわね。
まあ、舞花の外面の良さと枕営業の成果だと考えればこのぐらいはできるのかもしれませんけれども、奪われた方はたまったものではありませんわよね。その気持ちよくわかりますわ。
もっとも私は最後の方はあきらめの境地に達しておりましたけれども。
* * *
舞花に罠を仕掛けてから半年ほど経過いたしました。花が咲き実が十分に熟したころ合いでございますので、そろそろ収穫をしたいと思います。
ああ、半年の間にもいろいろ行いましたのよ。まずは舞花と大和様のお子様の回収を行いました。育児放棄とまではまいりませんが、ほぼ育児放棄の状態でございましたので救いだしたと言ったほうが正しいかもしれません。
舞花に育児が出来るとは思えませんものね。
一応大和様がご在宅でしたので育てていらっしゃったのですが、有閑マダムの皆様のペットにおなりになって家にいないことが多くなりましたので、ほぼ育児放棄状態になってしまいましたのよね。
そうそう、有閑マダムの皆様には大和様は中々に受けが良いそうでございます。なんでも泣いて縋る姿にそそられるのだとかで、何をされているのかは詳しくお聞きしておりませんが、楽しそうで何よりでございますわ。
さて舞花についてですが、完全に修二お父様を自分のものにできたと思ったようで、この間修二お父様と一緒に久しぶりにお店に行きましたら、我が物顔で修二お父様の隣に座っておりましたわ。
修二お父様も舞花のことをかわいがっているような演技をなさっておいででしたし、上手くいっているようで何よりですわよね。
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