雨音 短編

第8話

実家に彼の訃報が届いたのは街を出てすぐだった。病死だったと言われたが、詳しくはわからない。僕があの街で彼との数少ない思い出に閉じ込められないように、逃げ場を見出した頃を見計らったかのようだった。

葬儀は実家の近く。僕が知らなかっただけで彼の片鱗はまだあの街にあったということだ。僕は行けなかった。何か嘘言のようにその知らせを聞いて、薄れかけていたあの雨の日に背を向けて、賑やかで張り詰めた新しい地に身を投じた。

強いね。

僕が壊れたおもちゃのように繰り返していた時、彼はあの雨のような目で、どんな気持ちだったのだろう。怒っていたのか、困惑していたのか、それとも泣きたかったのか。