第10話
「わぁ......やっぱり広いね......」
「ええ、さすがですね......学生時代には見慣れて何も思わなかったものですが改めて見るとすごさを再実感しますね......」
そういえばリアナは元々この学院の生徒だったんだっけ、あまり自分のことを話さないから思い出せなかったよ......
この学院生であるリアナをお母様がスカウトしたっていうのは聞いているんだけど......どういう経緯なのかは知らないな、また今度チャンスがあれば聞いてみようっと
「さ、お嬢様学院内を回りましょうか......と言いたいんですが、ここからはお一人で回って頂いてもよろしいですか?」
「え?いいの?」
リアナがそんなこと言うなんて......私が言おうとしてたけど先越されちゃったな
「ええ、ここは学院の中ですしお嬢様になにか危害が及ぶことなど皆無に等しいことでしょう、しかもお嬢様もある程度はご自分の体を守るくらいは出来るでしょうし、万が一お嬢様に対応できないなにかがあったとしても学院の先生方が対応してくれるでしょう」
リアナはそれに、と付け加えて
「お嬢様が学院に通うことになれば私もお嬢様と一緒に学院に通うことになろので設備は確認しておきたいんですよね、まぁ一応念のためこれを渡しておきますね」
そういって赤色の丸い宝石のようなものをいくつかもらった。
「これって......」
「お嬢様もご存知の魔石です。ただ普通の魔石とは少し違いますけどね」
「どういうこと?普通の魔石は......それぞれ属性の魔力を半魔石に貯めておくものだったよね?それから衝撃を与えたり魔力を加えるとか魔力を何らかの方法で活性化させてその属性の魔力を半魔石が含んで魔石として成立するっていうものだったよね......?あってるかな?」
「ええ、大方正解ですね。更に付け加えておくと魔石に込められた魔力はどんどん消えていき、込めた魔力が多い方が魔石の中の魔力は持続します。半魔石の中にある魔力に反応を示す物質は反応する度に減っていって質のいい半魔石ほど何回も使うことができます。逆に質の悪いものなら一回で使えなくなったりもしますね。まぁそんなに質の悪い半魔石は売り物にもならないので市場にも出回らないほどレアですけど」
「うん、半魔石の質の判断は透明に近いかどうかだよね、まだ見たことないけど反対側までくっきり見える半魔石もあるんだよね」
「さすがお嬢様、しっかりと勉強済みですね、私から言うまでもないことでした。
話が逸れましたね、この魔石は少し特殊な仕組みになってましてお嬢様に身の危険が生じた時に光の当てると反応して起爆するようになってます」
「え......今爆発してないじゃない?」
「最初に一度光に当てることがこの魔石の反応に必要なんです、つまり......」
「この袋の中に一度入れて出したら......どかん!ってこと......?」
「ええ、そういうことです」
「ああでも安心してください、お嬢様とその血縁のものには危害を加えないようになってますそれ以外の人は死ぬことはないですけど吹き飛んで気を失うくらいですかね?」
「なるほど......?まぁ使わないのが一番だけどないよりはあったほうが安心だよね?」
「まぁ万が一の保険ですから......」
「じゃ、ここからは別行動だね?」
「ええ、お願いします。それでは失礼しますね」
そういってリアナはお辞儀してリアナは正面にある中庭?へと歩いていった
「学院生なんだからどこになにがあるかは分かっているでしょうに......」
私が一人で回れるように気を利かせてくれたんだろうけど......別に一緒に回ってもなにも問題はないと思うんだよね、まぁ学校にいる時はいつでも一緒にいられなくなるから親離れならぬリアナ離れのためなのかな......?私がいうのなんだけど私リアナにとてもべったりだからね......だって私が物心ついたころにはリアナは近くにいたしもう一人の姉も同然なんだからしかたないよね......ん?そういえば......私が子供の頃から一緒だけどお母様がリアナをスカウトしたのはリアナが学生の時......どういうことだろ......?
リアナに年齢を聞いても、「うふふ」ってにこやかに微笑んではぐらかされるもんね、まぁ今は淑女に年齢を聞くのは失礼だと知ったから年齢のことはあまり気にしていなかったんだけど.......これは一度聞いてみるべきだなぁ
それはそれとして、今は学校見学!
「まずは......どこへ行こうかな?」
目の前にある校内案内マップを見る。ここはショッピングモールかなにかなのかな?
......まぁでもこれがないとどこにも行けないんだけど
『1階』じゃなくて『1層』なのものすごい広さを物語ってるよね。
マップはなんの魔法かホログラムみたいなもので廊下を埋め尽くすように半透明上に浮かんでいて、左下には2層3層とあるからそこで階層の切り替えをするんだろうな。合計で......10層!しかも一つ一つがとっても広い。
「んーと......まずは大魔道図書館だね、前に来た時には本の中身までは見られなかったからどんな本があるのか内容を確認しよう」
たしか.......図書館は2層だよね。
マップの2層を見るとすぐに図書館の場所は分かった、というか2層の半分、ううん7割は図書館しかなかったから。
じゃ、さっそく図書館へ、れっつごー!
階段を登っていると人の視線が私に集まっている気がする......
ひそひそ声も聞こえるし.....こ、怖い、学校に通うことになったらこんなのが毎日続くのかな......
うう、もうちょっとで図書館、図書館だよ......
この階段、今まで昇ったどの階段よりも長いや、いや私が恥ずかしくて心の面でじゃなくて多分60段くらい登ってる......なにか違和感を感じると思ったら多分空間の歪みだ。1層の高さならそれぐらい階段が長くてもおかしくないんだけど、そうじゃない。多分階段が短いと空間の歪みに入りきれないから長くして空間のずれに対応させてる感じかな、まぁ全部多分の域を出ない憶測なんだけど......不思議と間違っている気がしない。
そんなくだんない事考えている内に階段を登り切ったよ......
考え事してると視線も気にならないし、長い階段も短く感じていいね
それにしても......絶景かな絶景かな。見渡す限りの本、本、本。進んでみれば360度本しかない
真上を見ても本がぎっしり詰まってる、しかも本棚が勝手に動いてる......
「やぁやぁ!見かけない顔だねぇ!新入りって呼んでもいいかな?いいよね!」
「ひゃ!」
突然大声で声をかけられた私はびっくりして肩をびくりと震わせる。でも、さっきまで人は私の周りにはいなかったよね?じゃあこれはだれなの......?
疑問に思った私が振り返るとそこには......
「よぉよぉ!豆が鳩でっぽう食らったような顔してどうしたんだぁ!?」
本がいた
「あ、そうか!こう言いたいんだよな!鳩が豆鉄砲を食らうんだろ!って」
本がいる
「だぁがちがう!こいつは倒置法って技法なんだなぁこれが!」
「ちなみに鳩が豆鉄砲を食らった顔ってのは古来から伝わったことわざってやつでなぁ!最近のやつはあんまよく知らねぇんだよな!知っとくと気分がいいぜぇ!」
「なぜなら......」
本が、ある
「知識があるって他人にマウントとれるから!がははは!」
しかもめちゃくちゃにうざい......
「ど、どうも......本さん......?」
「本さん!?おうおう歯がゆいぜ!お前さんにさん付けなんて似合わんよぉ!本だけで十分さぁ!」
「お前さんにってなによ!あなたと私初めて顔合わせるでしょ!」
「いやぁ!そうなんだけどなぁ!どうしてもそうは思えねぇんだよ!お前からはマイマスターみてぇな感覚がしやがる!」
「マイマスター?誰のこと?」
「おい、おいおい!冗談は辞めてくれよ!この学院を作ったその御方!ェT5Wミナ4HャMだよ!」
「え?なに、なんて?」
名前の部分だけ聞き取れない......
「あぁそうか!これ言えねぇんだったわ!今のなしね!」
「はぁ......」
「おれもよくわかんねぇんだけどよ!ぽっかり名前以外の記憶がなくてなぁ!何千年も生きてるといけねぇな!がはは!」
「ていうかお前さん以外に話しかけたことなかったわ!そういえば!」
「え?そうなの?こんなにおしゃべりなのに?」
「おいおいいちいち言わせんなよぉ!照れくせぇなぁ!お前にマスターと似た空気を感じて嬉しくなって思わず飛び出してきちまったんだよぉ!」
「そうなんだ......」
「そんな記念にプレゼント!いやあげるわけじゃなくて貸してやるだけだけどよ」
「その前にどんな記念なのか私は知りたいな?」
そんな私の声も聞かずに本がどこからともなくひゅんと飛んだきた
タイトルは......
『英雄王アーサー伝説』
アーサーさんのお話......?さっき見たけどな?
「この本はなぁ、この図書館の奥も奥、最奥に隠されていてな、本棚が動くのはそのためだといっても過言じゃねぇくらいだでな、作られてから誰にも読まれたことのない本なんだよ。」
「なんとなく、お前さんにならなぜか読ませてもいいと思えてな。偽装魔術がかかっててこの本は周りの人にはただの魔法参考書に見える、ただの魔法に興味がある少女に見える。」
「なんなの......?その本?なんでそんなものがあるのよ?」
「おれだって知らねぇよぉ!内容すら知らねぇのに!」
『英雄王アーサー伝説』
アーサーさんに関する本か......どんな内容なんだ?
これを読み終えた後に私は知ることになる、いまはたかが数十グラムしかないこの本が読み終えた後にはこの世界の前提を揺るがす、そして私の人生を大きく変える始まりだったのである......
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