第9話
町の真ん中に大きくそびえたつプラテクチタ魔法学院。
馬車から降りてもうすこししたら通うことになるであろう学校を見る。
外観から前世を含めて今まで見てきたどの建物よりもおおきい。
馬車は学校内の宿舎へと先に入っていき、それに続くように私たちも校舎の門をくぐる。
その瞬間立ち並ぶ商店街のような店、目の前にある大きな噴水で手品を行う人とそれに集まる人々。
いうなら第二の町のようなものが広がっていた。
前に来た時とそこまで変わらない様子が広がっている。
門をくぐった時に目の前にあったはずなのに、学院は広がっている町の奥にある。
「ほんとに不思議よね、門をくぐった先はどうして見えていたものよりも広いのかしら?」
「それは魔法学院の卒業発表のお決まりですね。建立された年すら分からない古代の建物。しかも学院の謎はこれ一つだけではないですからね...この大国きっての魔法使い達が何百年近くも研究を重ねていてもほとんど解明されていないんですけどね...今の研究では空間を改変する
「それ以外じゃ説明できないもんね。今町に魔物達が寄ってこないのも魔法遺物のおかげだし、おかしな話よね。どんどん成長していっているはずの魔法でも説明できないような技術が本当に存在してるんだから...」
「そうなんですよね、神がもたらしたともいわれてるんですけど、詳しいことはなにも...」
うーん、神がもたらした、かぁ...なんか当たらずも遠からず?っていう感じなような...
「まぁ分からないことは今の私がどれだけ考えても仕方ないかな...」
町の様子を見渡してみると手品を見ていた人達からおお、という歓声があがる。
「学院の中には許可がないと入れないですけど、ここは許可が不必要なこともあり人の流れが活発ですね」
「まぁ第二の町の中心と呼ばれるくらいだしね。魔法具やローブ、魔法使いに必須なものも売ってるのはこの国でもここくらいだし栄えるのも当然といえば当然よね」
「と、そんな話をしているうちに学園ですね。私は手続きを済ませてきますのでお嬢様はここで少しお待ちを」
リアナは学院の横にある受付のような場所に歩いて行く。中に入る人たちの検査を行っているのだろう、危険なものとかも授業のために持ち込むってお兄様言ってたもんね
「分かったわ」
待っている間に歩いていた時に気になってたものがあったからそれでも見に行こうっと
そうそう、これこれ。このめちゃくちゃでかい像
大剣を地面に刺した鎧を着た長髪の女の人の像、む、胸もお姉様より大きい......!説明の文を読んでみると『プラテクチタ王国の英雄、アーサー・フォークロア』
と書かれている。苗字を持たない彼女だけど、彼女の大きい功績を称えて
フォークロア、という『伝説』を意味する単語を授けたのだそうだ
苗字を持たないってことは元は平民ってことだよね?貴族が尊いとされる今の時代でもこうして尊敬されるってことはほんとにすごい人だよね、それに続いて続いてこう書いている
『この世界が始まって以来最悪の組織と言われる《
「へぇー......昔にそんなすごい人がいたんだね」
そんなことより大事なのはこっちかな。そう、《永遠の惨禍》
この国の人間のみならず、全世界の人間に知らない者はなく、残虐の限りを尽くしてこの世界どころかありとあらゆるすべてを混沌へと陥れ、吞み込もうとたくらんだとされている組織。今もその影響で魔力が強い人間以外が入ると一瞬で廃人へと至ってしまうし、あまりに空気中の魔力が濃いため、魔法を使っても空気中に溶けてしまうため魔法が使えないためそのまま『封魔区域』という場所が生まれた。
でも大事なのはそこじゃない、......まぁ大事だけど大事なのは『永遠』の部分。
ふと、像の前を通る親子の会話が聞こえてくる。
「おかあさん!みて!アーサー様の像だよ!」
「あなたいつもここ通るたびに言ってるわよ?ふふ、本当にアーサー様が好きなのね?毎日『英雄アーサーの冒険』読んでるしね」
「うん!ぼくも大人になったら魔法師団になってもし
「そう、じゃあまずは普段の勉強から頑張りましょうね?」
「うっ......はぁい......」
そう、さっきも言ったみたいに永遠の惨禍の永遠という言葉にはきちんと意味がある。永遠の惨禍はアーサーさんでも完全に壊滅させることは出来なかった。最悪の組織のトップであるレーナ・カタストロフィはアーサーさんに敗れた後とどめを刺される前にこの世界から去って別次元へと転移し、ほぼ消失まで追い込まれたが力を蓄えてまたこの世界に顕現するとされている。その必ず
なんか長々しく退屈な説明しちゃったね.....説明の続き読もっか
『彼女が愛用していた剣はエクスカリバーという名で、永遠の惨禍から世界を立て直すため神から授けられた神剣だといわれている。その強大な力で彼女の戦いを支えたという。エクスカリバーはその1振りだけでなく数十の剣をどことなく召喚し、彼女の意思に沿って動くという力を持っていた。3万もの大軍の相手に対し、1人では守り切れない背中などの死角をこの能力を使って死角をなくし、たった1人で敵軍を1万人まで減らし敵を撤退させた《バジャルの戦い》は皆様もご存知だろう。これはアーサー本人とエクスカリバー、どちらかが欠けていたとしても今この国は存在しない。』
久しぶりに聞いたけどやっぱりこの剣いんちきだよね、いんちき
流石神様が作ったとかいわれるだけあるよね
「でも......こんな強い神剣が残ってるなら永遠の惨禍なんて怖くないんじゃ......?」
そんな疑問に答えるように次の文が続いていた。
『彼女は永遠の惨禍との闘いを終えた後戦後処理を行った数年後、彼女は流行り病を患い息を引き取った。彼女が息絶えるその瞬間まで傍にあったエクスカリバーは彼女が息絶えた瞬間にはもうそこにエクスカリバーはなかった。さながら彼女以外が自分に触れることを嫌がるかのように。』
「ふぅ、これで全文か......」
ようやく全文読み終えた......なんだか新鮮なお話だったなぁ
それにしても英雄アーサーの冒険かぁ......私も読んでみたいなリアナに頼めば買ってきてもらえるかしら?それとも家に置いてあるかしら?
私はその時その違和感に気付いた
......そういえばなんでこの人のこと私詳しく知らないんだ......?
だってこの国どころか世界すら認めるような人で本すらあるような人だよ?
私剣を使って戦っていたことすらも知らなかった......
名前だけは知っていたけど詳しいことは知らなかった......いや、知ろうとしなかったのかな......? よく分からなくなってきた......あぁ頭が混乱してきた......
「ルーナ様、手続きの方は終わりましたよ......あれ?顔色よくないみたいですけど大丈夫ですか?」
「え、ええ......大丈夫よ、考え事していただけだから」
そうよね、知らなかったことに意味なんてないよね......だって今は興味持っているわけだし
私は楽しみにしていた学校見学に重大だと考えたくなかったその事実を隠すように足早に歩いた。
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