第5話

「おねーさま!またあとで!」

「うん...また後でね...」

もう2人と別れる階段までついてしまった...

「るなねぇ、がっかりしすぎ...」

「だってぇ...」

これからお昼まで会えないなんて...辛すぎて...

レッスンしんどいのに、救いの女神2人がいないなんて私が私のままいられる気がしないよ...まぁ毎日おんなじこと思ってるんだけど...

ああ...そう考えたら余計に憂鬱になってきたぁ...

「もう...お姉様は仕方ないんだから...」

「リズ、」   「シャロ、」

すると2人が示し合わしたように頷きあう。

「2人共、どうしたの?」

私が首を傾げていると...

「おねーさま!」   「るなねぇ!」

「「レッスンがんばって!」」

そう言いながら私にぎゅっと抱き着いてくる。

「あ...ああ...天国はここにあったんだな...」

そういって私はそっと目を瞑って2人を2人が抱きしめるより強く抱きしめ返す。

「お姉様、えへへ...」

「るなねぇ、あったかい...」

「もういっそこのまま1日終わらせよう、うん。」

「「それはだめ!」」

2人に諭されて私は渋々2人から離れた。

「ああ...でも2人に応援されたなら頑張らないわけには...」

 今日1日頑張る覚悟を決めて妹達と別れた。



「はぁ...ここからは私1人かぁ...」

 今の時間は午前8時、今からダンスの時間があってその後にはヴァイオリンの時間がそれぞれ2時間ずつ。

「ふう、」

ドアを開ける前に私は両目をしっかりと閉じて深い呼吸を1つする。

 これは私が前世の時からやる気持ちを切り替えるための動作。

集中する時は今も昔も必ずこれをしている。

誰かに教わったとか、なにか理由があるとか、そういうわけじゃないけど

 この動作をした後は集中するという風に脳に覚えさせている。

例えばテストが始まる前、それに限らず毎時間授業が始まる前にもしているルーティーン。

 この行動した後の集中力は人より高い自信がある。どのぐらいなの?って言われると難しいけど...

ガチャ

 私が部屋に入るといつも通りの入って正面に三枚の全身を映す鏡、そこから横を見れば衣装の山々が掛けられている。

 そうして時間が経たない内に先生が来た。

ガチャ

「ルーナさん、おはようございます。」

「おはようございます。」

 そういうと先生は私の全身を頭の上からつま先まですっと流し見る。

「うん、今日も言うところのない綺麗な佇まいですね。」

「ありがとうございます。」

 ダンス、と聞くと踊るのがすべてだと思いがち。

もちろん私もそう思ってた。

 でもダンスという分野は踊る前、そして終わった後の所作まで気を配る必要がある。

踊っている最中が一番大事なのはそうだけど、その前、後も大事なのである。

「さ、早速始めましょう。まずは前の復習から。10分程度で終わらせましょう。」

「はい、わかりました。」

うん、10分ね?10分......いや無理無理。できるわけないじゃん。前の2時間を10分?

なに私もはい。とか言ってんの?いいえ。って言わなかったの?

...そんなの言える訳ないけど.......



......できました。そう、人間死ぬ気になればなんでも出来るっていうよね?

その意味が少しだけ理解できた。それ以上深くは言うまい。


「よろしい、体にしっかりと染み付いているみたいですね。」

ふう、なんとか乗り切ったね...ああ、しんどがった...

「では、復習はおしまいです。今日から教える新しいものについて...」

......?

あ...まだ復習終わっただけ...?まだ10分......?これをあと11セットかぁ...なるほどね?

時間のこと考えちゃだめ。時計見ないようにしよ...




「お疲れ様です、今日もよくついてきました。あなたほど優秀な人は私が教えた中でも指折りの才能、そして努力量です。あなたが魔法学校に行くまでにあなたはどこの舞踏会に出ても目を引くような存在になれますよ。」

「そんなに褒めて頂けるなんて光栄です。」


......はっ!集中してた!今どんな状況?

ん?レッスン終わってるじゃん!さっきなにか言われたけど私なんて返した?

覚えてないんだけど...?

「さ、本日はこれで終了になります。お疲れ様でした。」

さ、おわったおわったー。早くヴァイオリン行こ?部屋近いしすぐに着くしね。

さ、いこいこ。ここまで来たらどれだけしんどくても大丈夫!


「先生、よろしくお願いします。」

「うむ。さぁ、本日もヴァイオリンを始めよう。」

......

「はい。」


うう...やっぱりいやだよぉ......誰か助けて...

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