第13話 神さま
親父と等々力をぶち殺したのはマダラだけど、マダラしか残ってないのも本当だから、おれはあのあとスパゲティをつくりなおした。別のソースはもうなくて、しばらく使ってなかったケチャップを麺といっしょにぜんぶ入れて炒めた。具がなんも入ってないナポリタンみたいな赤い麺に、残りの粉チーズをみんな振りかけて、マダラがもくもくと食べていくのを見ていた。
あざの初期色になったマダラの首が、飲み込むたびに動くのが嫌だったけど、見ないのも、見るのも悪い気がして見ていた。あのネックレスは、俺があげたやつだったことを思い出した。
母親が沈んだ湖には、他にもたくさん沈んでいたから、潜って探すといろんなものがあった。金属だったら腐らないから、ガキのころはそれを目当てにマダラとかわるがわる潜っては上がって、小銭を稼いでいた。
わりと新しい網カゴの横、そこにネックレスがあった。
こびりついた皮を落として、シルバーが見えたからそのまま水面に上がる。たき火に当たったマダラがこっちを見るからネックレスを投げた。にごった水でまだらに汚れたバスタオルでぬぐう。二、三回くるくる観察すると、これちょうだい、と言われた。
やだよ、返したけど、どうしても欲しいとごねられたから仕方なくあきらめた。マダラがなにかをやたらほしがるのはそれきりだった気がする。綺麗になったネックレスを、マダラは首に付けようとしてずいぶんもたもたしていた。寒かったからかもしれない。俺も体が冷えていた。手のひらを裏返して、火であぶっていると付けて、と呼ばれた。
変なやつだなと思う。射撃の腕はバケモンみたいなのに。マダラにもできないことがあるのが、なんとなく嬉しかったから俺はマダラのうしろにまわって金具をくっつけてやった。浮かんだ頸椎のうえで、ネックレスがきらきらしていた。
ありがと。こっちを振り向いて笑うマダラは、よくわからないけどとても幸せそうにしていた。
「ごちそーさまでした」
スパゲティを平らげて、マダラが手を合わせていた。
それがなんとなく神さまみたいに見えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます