第11話 剥製
吹っ飛ぶように目が覚めた。身体はそのまま、ベッドにくっついていた。
動いたらなにかにやられる気がして、じっと息だけしていた。
クソデカい、キングサイズのベッドの向こう岸で、マダラが寝息をたてていた。
ガキのころからずっとこうだ。マットが生きていたころは、俺とマダラの間で寝ていた。2人と1頭、サンドイッチみたいに並んで眠った。マットが死んで、俺らもティーンエイジャーになり、ベッドをふたつに分けようとしたらマダラがごねた。
誰かが、生きてて、寝返りとかで動くのが、わからないと眠れない。最初は信じなかったけど、無理やりに新しくしたセミダブルベッドふたつになった途端、マダラは一睡もできなくなって、顔に青黒いクマを作った。一週間で中古になったセミダブルはどっちも等々力に押し付けて、マットレスはキングに戻った。
軽く息を漏らせてマダラが寝返りを打った。
外で満月が出ていて、部屋の中は明るかった。
月あかりが、立体的なマダラの顔に影を落として、余計に派手になったコントラストのせいで人間みがなにもなくなって、剥製みたいに見えた。
なんで剥製だろうと思った。すぐに、マットの死骸を親父が剥製にしたのを思い出した。が、なにか、気味が悪かった。剥製にされたマットが、その後、どうなったかが思い出せない。かわりにいままで殺した子どもが、次ぎ次ぎに出てきた。
金髪、黒髪、ボブ、坊主、そばかす、青や茶色の目。細い腕、小さい頭、悲鳴。血、脳みそ。子どもはみんな甘い匂いがする。裂傷から突き出た骨は、フライドチキンのみたいに細かった。
まぶたのうえから目玉を押さえた。目の奥がひどく痛かった。
外でサイレンが鳴っていた。だんだん近づいてきたんじゃなくて、いきなり、すぐ近くから聞こえた。いつから鳴っていたんだろう。なにも、気づかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます