第3話 違法建築


 黒のハマーを十五分ほど走らせて、俺の実家についた。デカい門扉に霜がおりている。その先の、四角い箱を何個も雑に積んだような不安定な建物が、うすい霧にまかれていた。

 マダラの肩を強めに揺すったけど起きないから、肘置きを開けて取り出したペーパーバックをめくった。宇宙と交信するやつ。古本屋で、破格だった。俺はすっかり生きるやる気をなくしていて、オカルトじみたなにかに縋るときだけ、心が安らかだった。


 マダラのがわの窓が鳴る。等々力とどろきが、ガラスをノックしていた。

「」

 口が、あけろや、と動いたのでパワーウィンドウのボタンを押した。

「なにしてるんですか」唇についたピアスが光る。

「見たらわかるでしょ」ページを送ると、第五章、になった。

「マダラさん、おきて。親父が待ってます」

「ヴぇ」

 髪を思い切り引っ張られて、マダラは目を覚ます。等々力の指に毛がついていた。奴はその手を、自分のスキンヘッドになすりつける。

「等々力、ピアス変えた?」

「わかります?」

「うん、前のやつちょうだい?」

「嫌です。さ、早くして」

「ハイハイ」

 ちょっと待っててね。マダラは手のひらを振ると、助手席のドアをとんでもない強さで叩きつけて、閉めた。


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