第2話 マダラとマットと俺
なのにマダラは狙撃手をスッパリ辞めやがったんだ。
親父はキレたし、俺は絶望したし、一年後の今マダラの生活を俺が見ているのはそのせいだし、今日もマダラはキレイな顔してハマーの助手席側で寝ている。なんで奴がやめたか、それはな、犬を撃つのが嫌だから。
ターゲットの家に、犬がいる場合、吠えられたら終わるから最初に殺す。それが嫌だったらしい。だからマダラはできる限り、犬を犠牲にしないで済むように場所を、手口を、時刻を考え抜いていたけど、それでも年に何頭かはだめになった。奴はそういう時には必ず泣いた。そりゃそうだよな。
昔、ウチにもいたんだよ犬が。ゴールデン・レトリーバーのマット。俺が産まれた年に来たマットは、俺よりもマダラに懐き、老いて死んだ。12の俺も、同い年のマダラも泣いた。大型犬の寿命なんて十何年かしかないから、子どもとセットで育てるのは良くないと思う。物心ついたときから一緒だった生き物が死ぬんだ。耐えられねえよ。
ただマダラは子どもは殺す。俺もだ。奴のそこだけは好きだ。
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