第2話 マダラとマットと俺



 鹿野かのマダラは11歳から15歳まで俺の親父の下でスナイパーをやっていて、クソとんでもなく腕が良かったしびっくりするぐらいの顔面の強さでみんなに可愛がられていたから、当時の俺は死にたかったしいつかマダラを超えてやるんだとそればかり思っていた。なんでもやった、マジで辛かった、あんなに頑張ったのは生まれて初めてだった。


 なのにマダラは狙撃手をスッパリ辞めやがったんだ。

 親父はキレたし、俺は絶望したし、一年後の今マダラの生活を俺が見ているのはそのせいだし、今日もマダラはキレイな顔してハマーの助手席側で寝ている。なんで奴がやめたか、それはな、犬を撃つのが嫌だから。


 ターゲットの家に、犬がいる場合、吠えられたら終わるから最初に殺す。それが嫌だったらしい。だからマダラはできる限り、犬を犠牲にしないで済むように場所を、手口を、時刻を考え抜いていたけど、それでも年に何頭かはだめになった。奴はそういう時には必ず泣いた。そりゃそうだよな。

 昔、ウチにもいたんだよ犬が。ゴールデン・レトリーバーのマット。俺が産まれた年に来たマットは、俺よりもマダラに懐き、老いて死んだ。12の俺も、同い年のマダラも泣いた。大型犬の寿命なんて十何年かしかないから、子どもとセットで育てるのは良くないと思う。物心ついたときから一緒だった生き物が死ぬんだ。耐えられねえよ。


 ただマダラは子どもは殺す。俺もだ。奴のそこだけは好きだ。


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